世界を変えたいという想いと、音楽がある人生に感謝する日々
「僕の人生において一度だけ、音楽によって世界を変えることができると思ったことがあった。もっと平和になって、隣人を愛し合うといった世の中を願っていたんだ。でも、そのあとにわかったんだよ。僕は少し長生きしすぎてしまったんだと。世の中は変わることなんてないんだと気付いてしまったのさ。この世界は戦争、殺人、病気や死が存在するための場所なんだと。これが、この世なのさ」
という彼ですが、彼は音楽で他人に喜びを与えるという幸せを見いだしています。
好きな音楽を演奏することのできる人生に感謝している、とも語りました。

写真からも迫力が伝わってくるソニー(2012年時)
最後に、すでに亡くなった音楽仲間へ敬意を払うコメントを残しています。
「僕たちはそもそも、永遠にこの世に存在する生き物ではない。だから、彼らの死をそんなに悪いことだと考えないで欲しい。彼らはこの世にジャズを与えてくれた。これは終わりのない現象なんだよ。それってとても素晴らしいことだよね」
心身ともに健康で長生きできているのは、ヨガ修行といった精神活動にも精を入れているからでしょうか。
実際にヨガを続けたことによって、若い時にハマっていたというドラッグやアルコールから逃れることができたとのこと。
ただ、彼がいうには長生きの秘訣は、クリエイティビティな精神だといいます。
「ぼくが生きることができるのは、いまだに学び続けているからさ」
こちら81歳のときのライブ映像。
確かな演奏力と迫力が歳を全く感じさせませんね。
彼の音楽を聴いた人たちから賞賛の声が。
「彼は生きているテノール奏者の中でベストさ!」
「まるで今朝作られたみたいに新鮮だ」(65年前にリリースされたアルバム、Saxophone Colossusを聞いて)
「素晴らしい!」
何か一つのことを半世紀以上に渡って継続し、しかも第一線で活躍するということは、並大抵の努力では成し遂げられません。
85歳となった今、病気を患いながらも「自分はまだまだ終わらない」と言えるその精神力には、ただただ尊敬の念を抱くしかありません。
少なくとも彼より若い世代の私たちも、負けずに好きなことに精一杯、力を注いでいくことができれば…と背中を押される気持ちになります。
さて85歳まで生きることができたとして、私たちは彼が残してくれたような力強い言葉を語ることができるでしょうか?
source by:テレグラフ紙 , Sonny Rollins Official Site
文/臼井史佳