米・メキシコ国境の東部の64パーセントは、リオグランデ川の川底の最深部を結ぶ線(谷線)だが、米国側の岸辺に壁を築くと、米国側の住民はリオグランデ川の水利を利用できなくなってしまう。リオグランデ川の一部は、両国が利用しているダムであり、壁の建設は非現実的というほかない。
トランプ氏は、メキシコとの国境の壁が「トランプの壁」と呼ばれるようになってほしいと言っているが、密入国者が「トランプの壁」を乗り越えれば、トランプ氏は面目を失う。
米政府が、隙のない工法と監視システムについて、建設業者に情報提供依頼書と提案依頼書を提出しながら、地権者と交渉し、反対派と法廷で争っているうちに、2018年の米議会中間選挙が過ぎ、2020年の大統領選挙が迫って来るだろう。
このように考えると、「トランプの壁」が完成する可能性が限りなく低いことだけでなく、トランプ大統領がどのような言い訳をするかに世界の注目が集まることは避けがたくなる。(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
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