みなさんは普段スポーツジムに行く習慣はありますか? 何度かチャレンジしたけど、屋内で黙々とトレーニングを行うのが性に合わず、長続きせずに辞めてしまったという方も多くのいるのでは? そんな人には、ちょっと「風変わりなジム」がおすすめかもしれません。今回ご紹介するパリのジムは、なんとセーヌ川を浮遊する船型、しかもその原動力に人力が使われているという何とも近未来的なスポーツジムが登場するようです。
セーヌ川を渡る船型人力スポーツジムに見る、都市テクノロジーの姿
セーヌ川を浮遊するスポーツジム「Paris Navigating Gym」を手がけたのは、イタリアの建築家Carlo Ratti氏を中心とした建築チームCarlo Ratti Associati。
長さ20メートルにも及ぶそのジムは、20世紀初頭から観光客を運んできたフェリーBateaux Mouchesを模したデザインとなっており、Technogym製の革命的なARTISと呼ばれるランニングマシンを使うことで、人の生み出す熱量を有効活用、つまり人力で船型ジムを動かすという驚くべき発想を実現させたのです。
Carlo氏は、「このジムでは、人間の潜在能力の実態を図ることができる。運動によってエネルギーがどのように生成されるのか、さらにその熱量で実際に船が動くさまを実際に目視できるなんて、とても興味深いと思うんだ」と語ります。
なるほど、普段私たちが何気なく電気に変わるエネルギーというものについて、深く知ることができますね。
また、利用者達は年中いつでもセーヌ川を横断し、景色を一望しながらエクササイズができるわけですから、なんとも贅沢ですよね。さらにこの船はパーティーなどのイベントへも利用されるのだとか。

構造はこんな感じになっている

船を漕いで、カロリー消費!
今回お話を伺ったところ、日々の暮らしを気の向くままに楽しむパリの人々にピッタリな「放浪する」というテーマのもと、歴史と豊かな建築物に溢れるパリの街に、この浮遊するジムを思いついたのだそうです。
また、このプロジェクトを通じて、パリの運河の魅力を満喫しながら、普段は意識しないエネルギーについて肌で感じて欲しいという思いがあるとのこと。
例えば1時間で1キロワットのエネルギーを生成することは、単に体を鍛えるだけではなく、船をも動かす原動力となるのです。
ジム内に設置されたモニターでは、エクササイズによって実際にどれくらいのエネルギーが作られているのか、パリの街を眺めながらリアルタイムで確認することができるそうです。
これまでとは違う街の楽しみ方を知り、自身や環境について新しい発見ができるのです。
建築家の観点から都市開発に意欲的に取り組んでいる同氏は、これまで様々な都市で独創的な開発を行っており、例えばドバイでは太陽エネルギーを利用する特殊な天蓋を開発し、屋外での気温を下げるという気候変動への対策を行っています。
まだ運行はされていませんが、年内中には実現する予定です。
現在もパリだけではなく、世界中を舞台に新たなプロジェクトに取り組んでいるとのこと。今後の活躍が楽しみですね。
取材・文/貞賀 三奈美