ヨーロッパは、近代以前では封建国家同士が数百年にわたって争いを続けたし、近代国家に生まれ変わってからも二度の大戦を経験している。「三度目の大戦は、絶対に起こさない」という誓いからドイツとフランスなどが数十年かけて建設してきたのがEUだ。このうちイギリスは反EUの考えから今年3月末に離脱した。
3月末のEU首脳会議では統合の深化を目指して「ローマ宣言」が採択された。しかしその過程で、東欧と西欧の経済格差などもあり、「深化」へと向かうには程遠かった。
ただ先月に行われたオランダの総選挙では反EUや移民排斥を訴えた自由党は第一党になれず、ドイツの地方選挙でもメルケル首相率いる与党が圧勝した。EUはナショナリズムとポピュリズムに揺さぶられつつも、何とか理念を守る位置に踏みとどまっているように見える。
(財界 春季特大号 第446回)
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