安倍政権大混乱。誰が外務省に東シナ海問題再燃を焚きつけた

 

余りのことに、巷では「菅義偉官房長官が谷内の訪中成功に嫉妬して潰しに出た」という憶測まで流れたが、まさか菅が、安倍の意を受けて訪中した谷内にそんな態度をとるはずがない。推測しうる真相は2つに1つで、1つは、谷内の訪中報告は時事の解説のような楽観的なものではなく、戦後70年談話の中身や文言にまで踏み込んだ極めて厳しいもので、安倍が、そんなにまで言われるならもういい、中国に遠慮するのは止めて思い通りの70年談話を出す、9月訪中も止めだ、それならいっそ参院審議では分かりやすい「中国脅威論」を前面に出して安保法案への国民の理解を取り付けよう──と腹をくくってしまったという場合。

もう1つは、谷内の報告はそれほど悪いものではなく、安倍は70年談話もできるだけ角を丸くして対日批判を避け、何とか9月訪中を実現したいという方向に傾きそうだったので、それに危機感を抱いた官邸に巣くうヘイトスピーチ的なド右翼・嫌中派の側近たちが安倍に相談もせずに官房長官の名前を使って外務省に陰謀を仕掛けたという場合……。

どちらの可能性が高いかと言えば、私は後者で、なぜなら安倍には、一昨年末の彼の靖国参拝の後、ワシントンから繰り返し伝えられている失望や警告や忠告を一切無視して、谷内を通じての対中関係改善の積み上げを投げ捨てるだけの勇気が欠けていると思われるからである。しかし後者であれば一層事態は深刻で、この政権の運営はアウト・オブ・コントロールに陥っていることになる。

image by: 首相官邸

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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