サイバーエージェントのゲーム事業の位置付け
もうひとつの既存事業であるゲーム事業に関しても、見てみたいと思います。
右の表が表しているのは、日本のゲーム市場は世界の中でも有数の規模を誇る非常に大きな市場である、ということです。
左のグラフが示しているのは、スマートフォンのゲーム広告市場は伸びが止まっており、今後あまり大きく伸びないことが予想される、という事です。
一方で、サイバーエージェントのシェアは右肩上りで上がっている、と言えます。
つまり、
- 日本のゲーム市場=巨大
- 市場の伸びは止まってきた
- その中で市場シェアを増やしている
というメッセージになります。
「BCGマトリックス」に当てはめてみる
余談になりますが、経営学の世界では、Boston Consulting Group が提唱する「BCGマトリックス」と呼ばれる分析フレームがあります。
縦軸は市場の成長率、横軸がマーケットシェアを表します。
左上の「Star」というのは、市場成長率が高い中でマーケットシェアが大きいという領域になります。
サイバーエージェントの広告事業は、「Star」と「Cash Cow」の間ぐらいの位置付けになると思われます。
一方でゲーム事業の方は「Cash Cow」に該当すると言えるでしょう。市場全体は成長しないので、(競争が徐々に厳しくなくなり)投資は少なく済むが、シェアが大きいのでキャッシュを稼げるのが、ゲーム事業というわけです。
このように、2つの事業が、成長するだけでなく安定的にキャッシュを稼ぎ出すことができるため、AbemaTVといった大きな新規事業にトライできている。またそのことを、きちんと投資家に説明できていると言えるでしょう。
リクルート「市場データ」も参考に
この「市場データを使って投資家の教育をすると同時に、自社の優位性をアピールする」という方法を、昔から実践しているのはリクルートです。
リクルートの中でも、国内人材派遣領域の例をここで掲載してみたいと思います。
国内人材派遣領域は、人数にすると33.2万人と巨大で、YoY+6.4%で成長しているというのがこのスライドです。
その中でも、リクルートの国内の人材派遣ビジネスは、市場の成長スピードを上回る、YoY+11.9%で成長しているというスライドがあります。
最後に、売上だけではなくて利益率も、EBITDA率が7%と、非常に高い水準を誇っているという説明もあります。
つまり、
- 巨大な市場
- 市場成長率よりも高い成長率(=マーケットシェアが増えている)
- 高い利益率
という3点で、自社の優位性を説明しています。
繰り返しになりますが、この「市場データを使って自社の優位性をアピールする」という作戦は、誰もが使える作戦ではありませんが、少なくても「自社がマーケットの中でどのような位置づけにあるかを確認する」という作業自体は、非常に勉強になると思いますので、みなさん実践されてみてください。
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image by: サイバーエージェント公式HP