半世紀以上も繰り返される同工異曲の批判
防衛政策に関して、なぜ「危機が起きてからでないと法制はでき」ないのかは、田村氏の著書を見れば良く分かる。その都度、左翼が激烈な抵抗をしていたからである。
昭和35(1960)年の日米安保条約改定では、「米国の戦争に日本が巻き込まれる」と、全学連のデモ隊が国家に突入し、激しい反対闘争が繰り広げられた。
平成4(1992)年のPKO(国連平和維持活動)への自衛隊参加に道を開くためのPKO協力法案審議では「戦争への道だ!」と社会党、共産党が反対し、朝日新聞も「PKO協力の不幸な出発」と題した社説を発表した。
平成11(1999)年に有事関連法制が国家に提出された時も、「有事法制は戦争法だ」「アメリカの戦争に協力するためのもの」などと左翼は反対した。
こうした左翼の批判が正しかったかどうか、その後の歴史を見れば誰の目にも明らかだ。日米安保条約で、日本はアメリカの戦争に巻き込まれたか? PKO協力法で、わが国は自衛隊を「海外派兵」し、侵略戦争に乗り出したのか?
その後、カンボジアやモザンビーク、南スーダンなど各地における自衛隊の活動は世界の平和に大きく貢献し、各国から感謝され、国際的にも高い評価を得ているのはご存じのとおりです。当時、猛烈に反対していた朝日新聞なども、今では自衛隊のPKO支持に転じています。
(『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』田村重信 著/扶桑社)
昨年、成立した平和安全法制に関しても、野党やマスコミの一部は「安倍政権は日本の軍国化を目指している」「米国が起こす戦争に荷担することになる」などと批判をした。60年安保以来、半世紀以上もの間、現実を見ずに同じ批判を繰り返しているのである。
一般社会で、ある人物が50年以上も誤った言説を主張し続け、しかも間違っていた事実を認めず、反省も謝罪もしないとしたら、そんな人物はどう受けとめられるだろうか? 間違った信念に凝り固まった狂信者か、別の目的のためにそのような言説を繰り返す確信犯か、あるいは生活のためにはもはや転向できなくなった利得者のいずれかであろう。
いずれにせよ、そのような人物を政界やマスコミ、学界に多数、抱えていることは、わが国の自由民主主義国家としての構造的欠陥である。