ミサイルより怖い。日本全土が混乱に陥る北朝鮮「サイバー攻撃」

 

電磁パルス攻撃を警戒するのは被害の非対称性にあります。

日本国の電子機器を停止させるためにボカンと爆弾を爆発させたとします。

宇宙は広く、空間は繋がっていて、日本に限定して被害を起こさせるためには規模を小さくするしかなく、それでは被害も限定的。規模を大きくすれば、隣接する国々にも被害が及びます。

日本近海ならロシア、中国、そして韓国と北朝鮮。電子機器が死滅すれば、これらの隣国に甚大な被害があることでしょう。

韓国はもとより、中国やロシアの「軍備」はハイテク化しており、仮に日本周辺に陰に日向に配備する戦力が、軍事パルス攻撃による無効化して喜ぶのは米国だけです。

対して北朝鮮はどうか。これが電磁パルス攻撃を仕掛けるとしたら北朝鮮しかないと見られている理由です。

北朝鮮本国における電子化は、さほどなされてはいません。平壌市民の間では、かなりスマホが普及しているという話ですが、日本のそれとは桁が事なります。

鉄道網どころか、バスの運行管理にもネットが使われ、自動車の制御にコンピュータが用いられ、果てはIoTとのかけ声で、回転寿司のお会計まで電子回線が使われている我が国とではダメージが異なります。もちろん、軍備も。

米国は中東での戦争や戦闘において、サイバー空間を活用して機密を盗み首謀者を追い詰めています

ターゲットが携帯電話をもっていれば、発信される微弱な電波を辿り居場所を特定します。こまめに電源を切ったとしても、取り巻きが持つモバイル端末からの電波を追うことで、ある程度の位置情報を特定でき、人工衛星と組み合わせれば、世界のどこにいても米国の庭のなかを彷徨っているだけです。

さらにネットに繋がってさえいれば、あらゆる手段を講じることで、相手の手の内を丸裸にすることは可能です。

匿名化ツールTOR(トーア)」を使えば、IP履歴が特定できなくなり、日本国内では追跡が困難と、かつて冤罪をひきおこした「パソコン遠隔操作事件」から知られていますが、TORの利用者が逮捕された事例はすでにあり、米国がその気になれば特定できると見られています。

エドワード・スノーデンによる米国が世界中を監視しているとの内部告発はセンセーショナルに報じられましたが、インテリジェンス(諜報活動)の視点でみれば「常識」です。

分散型ネットワークと呼ばれるインターネットですが、大西洋や太平洋といった大陸間を繋ぐのは海底ケーブルで、この海底ケーブルの出入り口に盗聴器をつける手口は、海底ケーブルが敷設されたころから始まり、軍事的には第一次世界大戦から使われています。

また、イランの原爆開発を止めたのはスタックスネットという、いわゆるウィルスで、米国によるサイバー攻撃と言われています。

イランの装置は「オンライン」に接続されていませんでしたが、ウィルスを仕込んだUSBメモリを施設周辺で落とし物」にして、これを拾った不用意な職員が、職場のパソコンに接続したことで、本来は切り離された施設内への侵入を許し、遠心分離器の物理的破壊に成功します。

はてさて、このシナリオのいずれも北朝鮮には当てはまりません

平壌で普及が進むスマホもネットも「国内」に限定されており、いうなれば巨大な「無線LAN」です。

さらに人の往来が制限されているということは、路上に転がっているUSBメモリーを、落とし物と拾って、うっかりパソコンに差し込む可能性は皆無でしょう。

これが「非対称性」です。高度に情報化された社会では、電子機器の断絶は都市機能を麻痺させ、時に国民を死に至らしめますが、それほどでもない国の被害はわずかだということです。

それは「サイバー攻撃も同じです。サイバー空間を利用していれば仕掛けられる、様々な嫌がらせも困難です。具体的には「ネットバンク」を利用していれば、それを奪うなり閉鎖すれば、相手は干上がります。しかし、これをやっているのはむしろ北朝鮮の側です。

以下は日テレニュースよりの抜粋。

アメリカの情報セキュリティー会社大手の「シマンテック」の幹部は、連邦議会上院の国土安全保障委員会で開かれた公聴会で証言した。幹部は、北朝鮮がバングラデシュの中央銀行にサイバー攻撃を仕掛け、8,100万ドル(92億円以上)を盗み取っていたと報告した。

北朝鮮 バングラの銀行から92億円超盗む

北朝鮮はサイバー攻撃の大国として世界の安全保障では侮れない存在です。サイバー攻撃の利点は、自国がサイバー化していなければ、敵の攻撃を事実上無力化できる上、必ずしも母国を攻撃拠点にする必要はないということです。

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