全額弁償しても懲役2年6月?「オレオレ」受け子の哀れすぎる末路

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一向に減らない「振り込め詐欺」による被害。そのいっぽうで、犯行グループ内でも末端とされる「受け子」と呼ばれる役割を担った者にも、容赦なく実刑判決が下っていると報告するのは、裁判ウオッチャーの今井亮一さん。自身のメルマガでは、騙し取った金を全額弁償したという受け子が判決を言い渡された様子を紹介しています。

オレオレ受け子、全額弁償しても実刑っ!

18日(火)の午後、ちょと時間が空き、こんなのを傍聴してみた。

14時~14時10分、東京地裁816号法廷(20席、吉戒純一裁判官)で「詐欺未遂、詐欺」の判決。事件名からして、オレオレの受け子だろう。1件成功して、2件目で捕まったのか。

被告人は非身柄。黒スーツにグレーのネクタイ。濃い顔立ちで長身、20代後半かなぁ。右手首に皮革バンドの大きな腕時計。

傍聴席に、やはり長身で、金持ち風に涼しくぴしっとお洒落な年配男性がいる。父親かと思われ。

離れた席に、ワイシャツに暗色ズボンの、検察の職員が2人。はは~、被告人は保釈中で、実刑判決が出たら直ちに保釈を取り消して収監しようってんだな? その職員2人も含め、傍聴人は合計5人。一般傍聴人は俺1人らしい。

裁判官が登壇し、判決を言い渡した。

裁判官 「主文、被告人を懲役2年6月に処する。未決勾留日数中80日をその刑に算入する」

実刑だ。直ちに職員が1人出て、間もなく戻った。収監先とかに電話連絡を入れたんだろう。

判決の理由は……。

裁判官 「他人の親族になりすまし……氏名不詳者らと共謀し……」

駅の構内やコンビニのコピー機のそばにカバンを置き忘れた、中には会社の通帳や小切手が入ってる、至急現金が必要だ、すぐ返すから用立ててくれないか、自分は動けなくなった、会社の○○ってやつが行くので渡してほしい……。

もう典型的なオレオレ詐欺だ。が、そのあとを聞いて俺はたまげたょ。既遂は2件、500万円と860万円。3件目、300万円ので通報され、逮捕され……。

裁判官 「合計1360万円……両親の助力を得て全額を弁償し……」

ええっ? 被告人の報酬は大したことないはず。1360万円のほぼ全額は上位者へ渡ったはず。なのに全額を弁償し、しかも前科前歴なしだってのに、実刑? 末端の受け子から全額を弁償してもらえるオレオレ被害者って、普通いないでしょっ!

ただ、1件目の既遂は2013年のことで、そのとき被告人は、被害者(72歳女性)から頼まれて500万円の領収書を書いたんだそうだ。それで詐欺の現金受取役と分かったのに続けていた、そこが悪質とされたのか。

まぁね、求刑は懲役4年とかで重く、それを2年6月まで下げたってことなのかもしれないが、しかし……。

裁判官 「まだ若いですから、刑務所で頑張れば早く仮釈放がもらえると思いますから」

14時09分、言渡しが終わると、検察の職員が2人、バーの中へ入った。被告人の荷物は、お洒落なトートバッグに何か少し入ってるだけ。すぐまた保釈請求する予定なのか。

image by: Shutterstock

 

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『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』 より一部抜粋
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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