追悼・篠沢教授。「クイズダービー」元回答者が難病と闘った10年

 

「こうならなければよかった」「元気な人が羨ましい」などと思うと、心が沈み、体が重くなります。けれども私のいまある姿は、人工呼吸器を付けたことにせよ、自分で選んだ結果です。他人を思い煩うことなく我が道を行く。そう心に決めて、この一瞬の自分の体に満足すれば、お天気がいいだけでも嬉しいと感じます。声が出せなくても、心の中で好きだったフランス語の詩を吟じ、フランス民謡を歌っていられます。

そして、いましようとすることを決めて、一つ上の目標を定めると、心が躍ります。ベッド暮らしになってからは、毎日2時間は執筆に充てると決め、既に『ぶる ぶる ぶる ブルターニュ大好き』『美しい日本語の響き』『命尽くるとも 「古代の心」で難病ALSと闘う』の3冊の本の刊行が実現しました。

昨年は「クイズダービー」以来の知人である女優の長山藍子さんから、陽気で社交的な私の妻・礼子を、劇で演じたいとのお申し出がありました。劇の脚本の土台とするべく、夫婦自伝物語『明るいはみ出し』を半年かけて書き上げました。妻との出会いからいままでを楽しく綴り、大変な分量になりましたが、既に校正刷りとなり出版は間近です。

(中略)

人生、何事も上手くいくとは限りません。一時の成功も振り返れば大したことではないと気づいたり、失敗して打ちひしがれることもあります。けれども心の苦しみについては語らないことで耐えるしかありません

悲しみは口にしないでじっとこらえ、やり直して明るく前へ進めばいいのです。困難に遭うたび、私は自分にそう言い聞かせて乗り越えてきました。「前進 前進 また前進」はいまも昔も私の行動原理です。

(『致知』2012年3月号掲載)

image by: WikimediaCommons(Kirakirameister)(『クイズダービー』収録が行なわれていたTBSホール)

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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