名門企業の相次ぐ不祥事。なぜ日本企業の劣化が止まらないのか

 

Made in Japanの伝統と精神

こうしたウズベクの日本人伝説からもうかがえるように、日本人の勤勉さや優れた技術納期に間に合わせる約束の精神などが日本人のDNAとして脈々として歴史的に伝わってきたのだ。そのことがまた世界にも知れ渡り、戦後の日本経済発展の大きな原動力になってきたし、世界で「Made in Japan」の製品の信用が続いてきたのである。ウズベクの日本人伝説は、そうした日本人のモノづくりにかける真摯な精神努力を物語るエピソードの典型的な例ともいえる。

最近の大企業の相次ぐ不祥事は、その日本人のモノづくりの伝統がいま壊れつつあるということを示しているのだろうか。不祥事の背景として、グローバル競争が進み新興国とのコスト競争に敗北してきた焦りがあるとか、日本はAI(人口知能)やVR(仮想現実)の取り入れなどに遅れ欧米にも優位に立てなくなっている。さらにはITなど活用方法や新しい技術開発競争にも遅れをとっている──などの点を列挙することも多い。むろん、そうしたコスト競争技術開発競争などの遅れに対する焦りから安易な不祥事に走る例も少なくないだろう。

問題の本質は経営精神にあり

しかし、本当の原因は日本の経営者が自信を喪失しつつあり、真っ当な競争を挑む精神に欠けてきたことにあるのではないかという気がする。いま中小・零細企業をみると新しい技術や発想でスタートアップ(起業)する企業がどんどん出ているし、海外へも挑戦している。大企業はそうしたスタートアップ企業を買収することで自社の弱みをカバーしようとしているようにもみえる。昨今のM&Aの流行の背景にはそんな事情もあるのではないか。

大企業、中堅企業ももっと本来の日本企業の原点の精神に戻り戦後の廃墟の中から立ち上がってきた創業の精神を持つべきだろう。いま企業家に求められているのは「第二創業の気概と実行だ。

(TSR情報 2017年11月1日)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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