旅そのものは大満足

写真/松本すみ子
説明会では、添乗員は現地の空港で合流するとのことで、自分で飛行機に乗ってほしいと伝えられていました。ドバイでの乗り換えも指定のゲートまで行ってもらえば、添乗員はそのゲートあたりで待っていると。少々不安ながらも、まあ、安いから仕方ないかという感じです。
ただ、あの年輩のご夫婦やひとり旅の女性は大丈夫なのだろうかという思いもよぎります。でも、それが不安な人は当然、このツアーを選ばないだろうなと。
出発日、受付を済ませて飛行機に乗り込み、飛び立って安全ベルトを外した頃に、添乗員がやってきました。なんで! 実は、成田からちゃんと乗っていたらしいのです。「現地で合流と聞いていましたが?」というと、「皆さん、そういうんですよ」との返事。おかしいなとは思ったものの、いい方向への転換なので、むしろホッとしたものでした。
それにしても、旅行会社としては、添乗員が成田からしっかりお世話しますというPRをしたほうが、アピールするのではないでしょうか。すでに会社は混乱していて、連絡や手配がうまくいってなかったのかもしれません。
旅の途中、添乗員(添乗員派遣会社から来る)が、「てるみくらぶのツアーの安さはすごいです。私の日当はでるのかしらと心配になるくらい。でも、実績のある会社ですので、皆さん、安心して旅を楽しんでくださいね」と言っていたのを思い出します。実は、添乗員もびっくりな価格だったのです。
旅そのものは大満足でした。観光もホテルも食事も特に問題なく、いかにもポルトガルという感じの街並みを楽しみました。

写真/松本すみ子
リスボンでは夜の自由時間に、現地のガイドに聞いて、ファドの演奏も聴きにいきました。この店のマダムはとても親切で、女性の一人客ということもあり、タクシーを呼んでくれて、「心配なくホテルに帰れますよ」と言ってくれました。

写真/松本すみ子
今までの海外旅行の中でも、この旅の印象はすこぶるいいものでした。また、てるみくらぶを使ってもいいなと思ったほどです。
手頃な旅を何度も
だからこそ、今回の倒産は残念でなりません。もっときちんと経営し運営していたら、旅好きシニアから信頼される旅行社になっていたのではないでしょうか。
高齢者やシニア世代向けの旅行というと、豪華で旅費も高いものが多いのです。でも、そんなツアーに参加できるシニアばかりではありません。それでも、海外旅行に行きたい。そういう人が年金や貯金をやりくりして貯めたお金で海外旅行をしようとしたら、なるべく安いツアーを選ぼうとするのは当然。
今回の事件で、安すぎるのはやはり危ないと多くの旅行者が認識しました。とはいえ、旅行者が安くてお得なツアーを探す姿勢には変わりはありません。旅するシニアも同じ。必要以上に安くなくていいけど、でも高額ではない、手頃でリーズナブルなツアーを提供してほしいというのが願いです。豪華な旅に1度行くよりも、気軽にいろいろな旅に出たいのです。これは国内旅行も同じはずです。
そういう意味で、てるみくらぶは新しいコンセプトの会社になれる格好の機会を逸してしまったのかもしれません。つくづく残念なことです。
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