自公共闘の組織戦の限界
以上のどのレベルにどう反応したのかは分からないが、自民党支持層の20%、公明党支持層の25%が玉城氏に流れたと言われていて、これが玉城氏勝利の大きな要因となった。
自民支持層には、元々自民党そのものだった翁長氏に対するシンパ票が相当程度あるだろうし、公明支持層には、そもそも同党の沖縄県本部は今も「辺野古基地反対」の姿勢を崩してはおらず、現にこの選挙でも一部の学会員が公然と学会旗を掲げて玉城氏の応援に馳せ参じるなどの動きもあって、締め付けは余り効かなかった。
そのような学会の実状もあり、選挙戦術論のレベルでは、自公のタイアップによる「地を這うような組織戦」が破綻したことが大きい。自公連立政権が何があっても続いている理由は、公明党にとっては与党の立場にいることが創価学会存続の必須条件となっている反面、自民党にとっては自らの組織的な基盤が著しく衰弱している中で創価学会の集票力に頼る以外に選挙に勝てる方法がなくなっているという、もたれ合い関係にある。
今年を振り返れば、2月の名護市長選も6月の新潟県知事選も、野党側が「オール沖縄」とか「オール野党」とか言っている割には組織的にはバラバラで、統一された選対本部の下で強力な地域ローラー作戦を展開するような体制がとれていない。それに対して自公側は、全国から動員された公明党地方議員や創価学会の選挙担当などのセミプロ軍団を数千名単位で現地投入し、自民党地方議員や地元商工団体などから出させた名簿を元に徹底的な票読みと期日前投票動員の作戦を行う。今回も、そのような自公の地上戦が相当に進んでいると言われていて、それが序盤戦での「佐喜真有利」という評価を生んでいた。しかし、それに気づいた玉城陣営が対抗して期日前投票重視の作戦を採って巻き返し、それがかなり奏功してこの結果に繋がったと見られる。
このことの意味は小さくなくて、来年参院選に野党が統一候補を擁立する場合にどのような組織戦略を採るべきかについて重要な示唆を与えている。
image by: 首相官邸 - Home | Facebook
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2018年10月1日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
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