現在、習近平主席は欧州を歴訪しており、アメリカと欧州の対中連携にくさびを打ち込もうとしています。21日にはイタリアを訪問し、一帯一路で協力する覚書を交わしました。このことは日本でも大きく報じられました。
● 習氏、イタリア大統領と会談「インフラで協力」一帯一路で接近 EU、米は警戒
経済で苦境に陥っているPIIGS諸国の1つであるイタリアが中国に取り込まれたことで、EUでは危機感が募りました。対中政策で結束するはずが、イタリアが抜け駆けしてしまったからです。しかもG7(主要7カ国)として初めての覚書署名となります。
習近平は「古代のシルクロードを再生させたい。中国は双方向の貿易と投資の流れを望んでいる」などと述べましたが、イタリアの失業率は10%を超え、若者失業率は40%に達すると言われています。イタリアの窮状につけ込んでインフラ整備などの経済支援を申し入れるという、いつものパターンです。
もちろん中国への返済が滞れば、スリランカのハンバントタ港同様、イタリアのインフラ運営権は中国に取られてしまうでしょう。借金漬けにして相手の国のインフラを奪うわけです。
そのやり方があまりにもえげつないため、世界各国で中国に対する警戒感が高まっていた矢先の、イタリアの覚書署名です。そのため、EU首脳会議で改めて「中国の申し出に安易に飛びつかない」ことをEU各国が確認しあったというわけです。
もっとも、イタリアも昨年から財政懸念が再燃していて、尻に火がついている状況です。しかも、EUの財政ルールを押し付けられているため、独自の経済政策が出来ません。とくにEUの盟主であるドイツは厳しい財政規律を求めてきました。そのため、同様に財政危機に陥ったギリシャなどは、ドイツに対して第二次世界大戦中の賠償として36兆円を要求するということもありました。日本では「ドイツは戦後保障をきちんと行った」などと言われていますが、はからずも、それが虚妄であったことが露呈したわけです。