あとは、原発へのテロよりも恐ろしい大規模イベントなどソフト・ターゲットに対するテロへの対策を、オリンピック・パラリンピックまでにどこまで固めるか、そして、さらに大規模停電テロによる被害をどこまで抑え込むかでしょう。
テロリストから見て、最も簡単に実行でき、効果が得られるのは大規模停電テロです。東京の江戸川にかかる送電線をクレーン船が引っかけただけで、東京の中心部が6時間近く停電状態になりました。ブラックアウトの恐ろしさは、昨年9月の北海道胆振東部地震で、火力発電所がダウンしたケースでも明らかです。
例えば送電線を切断し、長時間の大規模停電を引き起こすことは、1人のテロリストでも可能です。プラスチック爆薬を載せた小型ドローンなどを使って送電線を切断します。そして、復旧に出てくる電力会社の人たちの近くに、ときおり遠距離からライフルで銃弾を撃ち込むだけで復旧作業は止まります。
そうして時間がたつほどに、病院などの自家発電装置の燃料が切れていきます。燃料を補給しようにも、停電で信号機が消えたことで交通が大混乱し、ほとんど身動きできないでしょう。生命維持装置など、電力で動く装置や治療が必要な人々が死に至るのです。その数は、停電時間が長引くほどに万単位になる恐れがあります。
これに対する対策は、病院などの自家発電装置の燃料を長時間、それも安全な状態で備蓄できるよう、消防法などを見直すことが第一歩となります。これは、首都直下地震への対策とも合わせて、早急に手を打たなければならない日本の危機管理の重要テーマです。(小川和久)
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