政府の法解釈の小理屈でタンカーなど守れるはずがないという現実

 

2001年、同時多発テロを受けた米国のアフガニスタン攻撃のとき、日本政府は反政府武装勢力タリバンを「国に準ずる組織」とみなし、自衛隊の派遣に歯止めをかけた例があります。

しかし、さきに述べたように、タリバンより装備的にも劣るソマリアの武装勢力が、米軍の特殊作戦用ヘリを撃墜し、米国のソマリア撤退のきっかけとなった1993年10月のモガディシオの戦いなどのケースを忘れてはなりません。

政府がいう「国に準ずる組織」に該当しない中小規模の武装勢力でも、多数のRPG-7対戦車ロケットなどを備えているのは常識です。まして、イランの革命防衛隊が多数持っている高速艇は2連装の23ミリ対空機関砲を標準装備しています。護衛艦が搭載している武器の範囲内にせよ、それを適宜柔軟に使って対応できないことには、その攻撃を阻止したり、タンカーを守ったりするなど不可能としか言いようがないのです。

それに、「攻撃してくる相手が海賊など国家とはみなされない集団であることが明確な場合」と言いますが、どうやって判断するのでしょうか。相手は既に攻撃に出てきているのです。確認作業をしている間にこちらは全滅です。

だから、日本の現状では「法匪」のような小理屈をこねくり回さないで、正面から「緊急避難」や「正当防衛」の考え方で対処するしかないのです。

しかし、お役人は言うでしょうね。「そんな事態にもなりかねないから、タンカー護衛なんかしないほうがいいですよ」(小川和久)

image by: owenr osemarie / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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