そして、もうひとつ、セリフ形式で話す重要なメリットとしては、表現を練り直すのにかかる時間が、ゼロである、ということ。
これも例文で説明しますと、「あのあと彼女は、こんなふうに言っていましたよ。『ああいうふうに褒められたのは初めてだったので、すごいびっくりしたけど、嬉しかった!』って、喜んでいましたよ、先輩」
この話の経緯は、想像していただければわかると思いますが、先輩・後輩・彼女が一緒にいたときに、先輩が、彼女にとって意外な褒め方をして、解散したあと、その彼女が後輩に、その言葉の感想を述べた、という状況ですね。
いまここにいない彼女の話した言葉を、後輩が先輩に聞かせるにあたって、彼女のセリフをそっくりそのまま引用することで、話を練るタイムロスなく、即答で話せているわけですね。
タイムロスなく話すために、「こんなふうに言っていましたよ」という前振りのあと、セリフを再現して、「って、喜んでいましたよ」と、言っていた内容を表現しなおしていますよね。
これ、書き言葉の文章ですと、ちょっとおかしな感じにも見えるのですが、話し言葉というのは、現実では、こういうことの連続なんですよね。
そして後日、さらにもっといい話に練り直すならば、「あのとき彼女は、自分でも気づかなかった自分の良さを、先輩に褒められたことで、驚きとともに、大変大きな気づき、励みになったみたいですよ…」
ちょっと気恥しくなるような例文で申し訳ないのですが(笑)、粗っぽく、そっくりそのまま引用したときにはない、少しこなれた話になりましたよね。
このように、いきなり、こなれた話を目指し過ぎて、寡黙になってしまうのではなく、とりあえず思い出せることから口にしてしまい、追々、話を練っていくというやり方もあるわけです。そんなときに、セリフをそっくりそのまま引用すると、話が早い、というわけですね。
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