では、前述のネガティブワードを、意味から考えて、言い換えの知恵を絞ってみましょう。
「嫌い」
その人の嗜好性を、最もシンプルかつダイレクトに、表現できる言葉です。
自分の嗜好性を表明するのには便利ですが、自分とは違う嗜好性を持つ人の価値観を否定することにつながり、聞き手の人数が多ければ多いほど、悪影響が広がります。最悪なのは、「あれが好きなんて、バカだよ」などと、それが好きな人の人格を否定する表現を付け足してしまうこと。
好き嫌いは個人の自由ですから、嫌う自由ももちろんありますが、それが好きな人の価値観まで否定するのは、日常の人間関係においては、やりすぎだと思います。
ただ、衝撃的な表現ですから、わざと炎上するには、効果があるかもしれません。
“〇〇が好きだというバカ”
この〇〇に、好きな人が多い誰か・何かの名前を入れてみると、いかに炎上できるかがお分かりいただけると思います。
また「嫌い」という単語は、そのものごとをざっくり全否定してしまう傾向があります。例えば、“メロンが嫌い”と発言したとして、聞き手がメロン好きの場合だけではなく、メロンを丹精込めて育てている農家さんまで、傷つきますよね。“あの子が嫌い”と言われたら、その子のご家族もがっかりされるでしょう。つまり「嫌い」は、それに携わるすべての人を敵に回す恐れがある表現なのですね。
では、言い換えてみましょう。コツは、
- それが好きな人の価値観をまず認めること
- それが「嫌い」なのは自分に限った価値観であること
- 感情ではなく、事実を
- どこが、どう、どうして、を明確に
- 好きになるには、それがどうなればいいのか?
このようなニュアンスを込めることです。
例えば、人気の、ある音楽グループ「A」が嫌いだとして、話の行きがかり上、好き嫌いを表明せざるを得ない場合。「Aって、いますごい人気ですよね~(好きな人が多いことをまず認める)。曲がハード過ぎて(どこが、どうして)、私は聞かないジャンルなんですけど(聞かないという事実)、もう少しポップな感じになれば、好きになるかも~(どうなったら好きになるか)」…と、このように「嫌い」というワードを使わなくても、また、「苦手」などの類義語に変換しなくても、会話は成立しますよね。
それどころか、「好き」という単語を持ち出すことに成功しました。そうすることで、自分の脳内には、好きなことを思い描くイメージができるわけです。嫌いなところを考えるより、よほど、有意義ですよね。
さらに、この言い回しでは、どこが苦手なのか、遠回しに言及しているわけですが、より、聞き手に受け入れてもらうためには、それが好きな人でさえ、「そこがいいところなんだけど、好き嫌いはあるだろうね~」と納得するようなポイントを挙げるのが、角が立たない言い方だと思います。
この例文で言えば、曲がハードだから、聞きづらいと思う人もいるだろうね、自分はそこが好きなんだけど。と、その音楽グループAが好きな人からも、理解を得やすい要素を挙げて、丁重にお断りしているわけですね。
納豆やパクチーなど、それが嫌いな人も多い食べ物などに当てはめて考えてみると、わかりやすいと思います。