香港デモや米中貿易戦争は序の口。習近平を追いつめる貿易法改正

 

産業補助金は中国の生命線

これに対し中国は「産業補助金は中国産業政策の中核をなしており、これによって中国企業は安く輸出できるし、中小企業の育成にもなっているのだ」と弁明しており、廃止する気はないのが実情だ。

中国は2014年頃から産業投資基金補助金)を急増させており、基金の総額は2017年には8,000億元(約12兆8,000億円)を超えていると予想されている。もっとも力を入れている分野が「中国製造2025」という政策でハイテク分野を中心に2025年までに先進国並みの“製造強国”を目指すとしており、最終的には人工知能(AI)などの先端分野で世界市場の大半を占めるという目標を掲げているのだ。

このため、日米欧の貿易担当大臣の間では世界貿易機関WTOの補助金ルールを改正し世界貿易の歪みをなくすことで意見が一致している。アメリカはこれに先立ち、WTOを脱退し独自に中国に対し制裁を行ない高関税をかけるとし、第一弾から第四弾まで個別分野の関税引き上げを表明している。アメリカは中国に1,484億ドルを輸出しているが中国からはその3倍の4,284億ドルが対米輸出され、その分が貿易赤字となっている(2017年)。

貿易ルールの改正で話合いを

中国の新興国への資金援助や米中貿易戦争はもはや二国間の問題ではなくなってきている。太平洋、インド洋の覇権争いが絡み、米中の対立とその政策は世界の株価や為替レートなどの乱高下などに大きく影響しているからだ。貿易戦争を続けたり、借金をカタに港湾などの租借権でもめている場合ではなくなりつつある。世界の貿易機関で早急に話合い、納得されるルールを作る時期に来ている。

今のところ、米中とも戦争に至る実力行使は回避しているものの、時間がいつまでもあるわけではない。アメリカの圧力に引けをとらず強硬に対抗する中国はここ3~4年で強い自信をつけてきたようにみえる。しかし香港の大規模デモ、国内経済の高度成長の停滞、国内の民主主義運動などへの圧力――等々、中国の強硬路線も決して楽観できる状態ではない

(TSR情報 2019年10月31日)

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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