失われた30年が強みに。日本が大停滞時代をくぐり抜けられる理由

 

日本が大停滞時代を乗り切る政策

日本は、江戸時代という大停滞時代を経験しているので、インバウンドという新しい需要を作ってはいるが、もう1つ、社会を大停滞時代に適合するように改革しているように見える。

それも、政府も日銀も意図しないで、それを行っている。または、米国などの目があるので、意図していないと見せているだけなのかもしれないが。

江戸時代の幕府は、庶民の生活に関与しないという自由性を確保しつつ、コメ中心の統制経済の社会にした。太平洋戦争時にも統制経済にしたが、それを再度、日本は世界に先駆けて行い始めた様に見える。そして、経験があり国民も目新しくないので、抵抗しない

しかも、すでに、日本だけがこの大停滞を30年も続けて、日本は、大停滞時代の先導者になっている。このため、日本が、この大停滞時代に適合する社会体制を築いているとも見える。

長短金利の統制を日銀が行い、成功したのでFRBも来年初めには始めるようである。もう1つが、株価の統制である。これは、まだ制御が不十分であり、持続性に問題がある。当初、長く行おうと思っていなかったことから、持続性を考えなかったことによると見るが、株価維持を止めたら、大幅な暴落になるので、止めることができない。

ということで、日本の目指していることは、国民の自由性を確保した統制経済であるとみる。前回見たように、日銀がETFを買い続けると、東証1部の上場企業のほとんどが、企業の株の半分以上を日銀が持つようになる。

企業株の半分以上を国が持つと、企業の自由性は確保して、しかし、政府の統制事項を守らせることができるようになる。統制事項違反をすると社長交代を要求できるからである。この低成長時代は、企業利益も必要であるが、国民の平等的な分配も必要になる。労働者と企業経営者の分配にも国が関与することになる。

この統制経済が成功すると、大停滞時代の経済体制として、普遍性を持つようになる。

国家資本主義とも社会主義とも見えるが、日本は苦し紛れで、その実は意図しないか他に隠して、統制経済社会を構築している。

勿論、需要を作る3つの方法を行うことも必要であるが、そう簡単に需要は作れないので、大停滞時代になっているから、社会全体が定常状態になっている。貧富や地方と東京の格差も固定化するので、いかに分配するかや、いかに研究開発投資をするかが、国としての大きな関心事でもある。

ソ連のゴルバチョフ書記長は、高度成長期の日本を訪れた時に「日本は世界で最も成功した社会主義国だ」と述べたというが、それを今、日本は復活させているともいえる。

というように、高度成長を日本にもたらした日本株式会社を再度、機能させることでもあるようだ。衰退途上国から復活するには、再度、大きな方向を描いて国が関与していくしかない。そして、日本が再度、大停滞時代を抜けて、先進国トップ近くになったら、国主導から民間主導に戻していくことである。

さあ、どうなりますか?

image by: Sean Pavone / Shutterstock.com

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