終生権力者か、死か。大統領引退後のプーチンを襲うロシアの現実

 

プーチンは、なぜメドを首にした?

私は、2つの理由があると思います。

1.スケープゴートとして

ロシアの現状は、非常に厳しいものがあります。GDP成長率を見ると、

  • 14年:0.7%
  • 15年:-2.31%
  • 16年:0.33%
  • 17年:1.63%
  • 18年:2.26%
  • 19年:1.08%

00~08年、年平均7%成長していた国とは思えない惨状。経済低迷の主な理由は、2つでしょう。1つ目は、欧米日による経済制裁。2つ目は、シェール革命の進展で、原油価格が00年代ほど暴騰しなくなったこと。

最近、ロシアでデモが頻発しています。年金受給年齢引き上げ、ネット規制強化、モスクワ市議会選挙に反プーチン候補が出馬できなかったことなど。理由はいろいろありますが、根本的なものは、「所得が増えないむしろ減っていること」でしょう。

プーチンは、裏切り者のメドを、首相として使ってきた。しかし、国民の不満が高まってきたので、「スケープゴート」として使用したのです。

2.ライバルになる可能性があるから

これから、プーチンは、「2024年オペレーション」を推進していかなければならない。そうなると、メドみたいな男は、また裏切って「俺が大統領になろう!」と野望をもつ可能性がでてくる。だから、今のうちに切ったのでしょう。

新首相は誰?

さて、新首相になったミシュスチンとは何者でしょうか?ロシア人の99.99%は、数日前まで知らなかった無名の人物です。1966年、モスクワ生まれ。1989年、モスクワ機械・精密機器大学卒。1992年、同大学院卒。1998年、ロシア連邦税務局に入局。2010年、連邦税務局長官。2020年、首相に指名される。まだ情報は多くありませんが、これからいろいろでてくることでしょう。

いずれにしても、権力保持を目指すプーチンにとって一番重要なのは、新首相に野心がなくて、弱いこと。こうして、ロシアの「指導者デフレスパイラル」はつづいていきます。

image by: Northfoto / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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