トランプの悪辣。「黒人殺害抗議デモ」で威嚇し暴力も勧める愚行

 

3番目は時代的な問題です。1991年はブッシュ(父)の時代で湾岸戦争が終わったばかり、政治が内政に向いていない中で発生した事件でした。一方で、2014年はオバマ時代で、一見すると「どうして差別暴力事件が頻発?」という違和感を感じさせますが、オバマがこの種の事件に対しては「とにかく人種間の分断を避けたい」という穏便な言動に終始したことが、問題の根絶を先送りした事になったのかもしれません。

そうした時代と比較すると、今回はトランプ時代であり、多くの反対派は「トランプが白人至上主義を煽った結果、こうした事件が起きる土壌が生まれた」と考えています。ですから、もしかすると事件への抗議行動は、このままエスカレートして行って「トランプ打倒運動」に発展する可能性もゼロではありません。

そのトランプは、当初は犠牲になったフロイド氏の遺族に電話をするなど「殊勝な」態度も見せていた(但し一方的に喋った失礼な電話であったとのこと)ようですが、ホワイトハウスがデモ隊に囲まれると、

「突入してきたら犬で攻撃して、その次は見たこともないような武器で対抗してやる」

などと暴力的な威嚇を行い、更に全国知事会議では、

「諸君は手ぬるい。デモ隊を圧倒すべきだ」

と更に暴力の使用を勧めるという悪質な姿勢を取っています。この問題、一気にアメリカを「コロナどころではない」状況に追い込みました。

image by: bgrocker / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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