現役教師が検証。文科省が進めたがる「少人数学級」は実現可能か?

 

以下、突然30人学級が実現するという、架空の想定をしてみる。

ベテランのA先生は、30人学級だろうが、40人学級だろうがやり遂げる力がある。A先生にとっても、30人になること自体は助かる。A先生がもつはずだった10人は、別の人が担任することになる。

同じことが全ての先生にいえる。そうなると、1人の先生ごとに10人もてなくなる子どもが出る。その分、他の人がもつことになる。

校内に余剰人員はいないので、新しく大量に採ることになる。単純計算して、現状の担任3人あたりに1人の増員である。4分の1は、増員した人が担任することになる。

そうなると、育成に時間と費用がかかる。育成期間中は、やりながら鍛える、という方向をとることになる。これも当然である。

支援級を除いて各学年5学級、現状で30人の担任がいる大規模校だと、10人増員することになる。育成対象が一挙に10人もいるとなると、人数25%減の恩恵ではカバーしきれない。元々が各々労働時間がオーバーしていたのだから、無理が生じる訳である。結局、全体最適という観点からしてもマイナスだし、個々にもしわ寄せがいくのは間違いない。

以上は、非現実的な架空の想定である。現実は、一気に採用を増やすということはできない。

だから「段階的に採用」という方向になる。政府の出した方向だと、実現に10年間かけるという。余剰人員が全くいないために講師に頼っているという現状からすると、10年でもかなりの急ピッチである。

「教育は人なり」という言葉が示すように、成否の鍵は人次第である。教育におけるICTの活用は、あくまで人の補助である。工場やシステム管理のように、ロボット中心になることはない。だから、未来になってもなくならない職業なのである。

30人学級の実現は、担任の現状からすると、夢のような話である。しかし、理想、ビジョンを明確に掲げることさえできれば、時間をかけて必ず実現する。

素晴らしい試みであるものの、現場から見た問題点も数多くあるので、次号で引き続き考察していく。

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