政治の女性化は必須であるはずなのに
安倍前首相がもし責任ある政治家として、民間企業や国家・地方公務員に女性割合を上げることを求めるのであれば、率先して自らのフィールドである政治の世界におけるそれを実現して範を垂れるのでなければおかしい。
列国議会同盟(IPU)のしばしば引用される統計「政治の中の女性」2020年版を見ると、国会議員(2院制の場合は衆議院)の中で女性が占める割合で日本は9.9%で全189カ国中で165位の最低ランク・グループに属する(図5)。図には165位近辺だけを切り取っているが、日本の前後は途上国ばかりで、その中には普通の人が「こんな国、あったっけ」というようなところもある。アジア地域平均の20.5%にも遠く及ばない。
また同じく閣僚級ポストに女性が占める割合では15.8%で全182カ国中で113位(図6)。もっと詳しく、第2次安倍内閣の女性閣僚を見ると次のようになる(IPUとは統計の取り方の違いからか必ずしも一致しない)。
内閣名 発足日 閣僚数 内女性 比率
・第2次安倍内閣 12-12-26 19 2 11%
・ 〃 (改造) 14-09-03 23 6 26
・第3次安倍内閣 14-12-24 21 4 19
・ 〃(1次改造) 15-10-07 21 3 14
・ 〃(2次改造) 16-08-03 22 3 14
・ 〃(3次改造) 17-08-03 20 2 10
・第4次安倍内閣 17-11-01 21 2 10
・ 〃(1次改造) 18-10-02 21 1 5
・ 〃(2次改造) 19-09-11 22 3 14
2013年春に言い出して、それから最初の14年9月の改造ではさすがに26%にまで膨れ上がるが、この内閣で小渕優子と松島みどりはたちまち辞任に追い込まれており、それで熱が覚めたのか、以後は比率が下がるばかり。18年10月の改造では5%にまで後退した。ここにも、やってるフリも1年がせいぜいで、そのあとはフリすらも忘れて放ったらかしというのが安倍流儀がはっきりと表れている。
ちなみに、この間に登用されたのは13人(回数は安倍政権下での入閣回数)。
- 3回以上:高市早苗(6)、上川陽子(4)、山谷えり子(3)
- 2回:有村治子、丸川珠代、稲田朋美、野田聖子、森まさこの5人
- 1回:小渕優子、松島みどり、島尻安伊子、片山さつき、橋下聖子の5人
菅義偉政権は上川陽子と橋本聖子の2人である。
どうして日本の全女性は怒らないのか?
こうして、世界的に見ても日本の状況は恥ずべき状態であることが分かる。安倍前首相の「女性の活躍」は何の成果も上げなかったどころか、自分が首相として選任する閣僚においてすら何の進展もなく、また衆議院議員の各党別の女性比率を見ても、自分が総裁を務める自民党の方が格段に低い(20年9月時点、比率が大きい順)。
- 共産党 25.0%
- 立憲・国民・社民 14.3
- 公明党 13.8
- 維新の会 9.0
- 自民党 7.4
人様に向かっては「女性の活躍は成長戦略の中核」などと吹きまくるが、自分では何もしないというこの甚だしい無責任ぶりに、全女性は決起して糾弾し、自分の言葉に責任を持つとはどういうことかを思い知らせてやるべきである。これほどまでにバカにされて誰も怒らないという、男だけでなく女の従順さが「安倍一強」の虚構を支えてきたのである。それを菅政権にまで引き継がせてはならない。
あ、1人だけ本気で怒っている女性を見つけた。村上由美子=経済協力開発機構(OECD)東京センター所長が6日付「東京新聞」夕刊に「新政権に問う/指導層の『女性不在』にメスを」と書いていた。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年10月12日号より一部抜粋)
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