とはいえ、中国は、バイデン氏に対して、警戒感を解いていません。オバマ政権時、最初は蜜月関係を演出して「新型の大国の関係」をアメリカに認めさせようとしていましたが、アメリカへの相次ぐハッキング攻撃などにより、最終的にはオバマ政権を怒らせてしまい、南シナ海での「航行の自由作戦」を招いてしまいました。
トランプ大統領誕生時、習近平政権はビジネスマンのトランプ氏を与しやすしと考え、最大級のもてなしで中国に招きましたが、それも読みが甘く、結局、米中貿易戦争から現在の対立関係まで進んでしまいました。
ニューズウイークによれば、アメリカ国内には中国共産党と連携し、その指導に従う組織が600ほどもあると判明しているそうです。同記事によれば、FBIのクリス・レイ長官は7月にハドソン研究所で行った講演で、FBIは10時間に1件のペースで中国絡みの新たな事案の捜査に着手しており、現時点で抱えている5,000件近いスパイ事件の半数近くに中国が関与していると述べたとのことです。
SNSなどを駆使して誤情報を流し、アメリカ社会の分断を狙っているのが中国です。そして、この大統領選挙を前後して、アメリカ社会の分断はまさに深刻化していました。
上記のニューズウィークでは、フェイスブックやツイッターで政府のコロナ対応や人種差別問題を批判する投稿を繰り返す、アメリカ人を偽装する中国人の活動が語られています。
こうした投稿は、文章が不自然で、時々中国語の漢字がまざっており、比較的目につくそうですが、別の無数のアカウントから書き込みがされている大量の投稿にも同じような特徴があるとのことです。
こうした活動は大統領選投票日が迫るなか活発に続けられ、グーグルやマイクロソフトも、直近の6週間にトランプ、バイデン両陣営の関係者に対するサイバー攻撃の試みで中国系組織の関与が疑われるものが複数あったと発表しています。
当然、バイデンや民主党側もこうした中国の工作活動は知っており、警戒感を持っているはずです。前述したように、オバマ大統領の時代から、中国のサイバー攻撃をアメリカは問題視していました。また、民主党は人権問題にうるさいため、対中圧力が強くなるという読みもあります。
ただし、安心はできません。ただでさえバイデンには健康不安が噂されていますし、息子のハンター・バイデンと中国との関係も不透明です。
ニューヨーク・ポストが10月15日に暴露したところでは、修理に出されていたハンター・バイデンのコンピュータ・ドライブからは、中国華信能源公司のCEO葉簡明とハンター・バイデンが副大統領だった父親を紹介するという名目で、年間1,000万ドルの顧問料をもらう契約が出てきたと、いわれています。
そして、バイデン自身も、同社の10%の株式を受け取っていたという情報までが流布されています。民主党政治家はカネに弱いという伝統もあります。
福島香織氏によれば、バイデン一家は江沢民派とずぶずぶで、ハンターの違法性行為映像にかかわっているのは、元人民銀行の戴相竜の娘婿の起業家、車峰(すでに逮捕)と言われているそうです。ハンターは北京を訪れるたびに、車峰のアレンジで違法性行為にふけっていたといいます。車峰は、江沢民派の大番頭だった曽慶紅の手下でした。
福島氏は、これらのバイデン一家のスキャンダルは、反習近平で江沢民派の在米華人が、習近平を追い詰めるトランプを応援するために流したものだろうと論じています。
このスキャンダルを利用して、反習近平勢力がバイデンに対中圧力を強めるよう要求してくるかもしれません。もちろん習近平側がこのスキャンダルをつかめば、逆にバイデンを脅す格好の材料となります。