バイデン政権下での日米関係
では日米関係はどうでしょうか?
「バイデン氏は日本に冷たく、中国にやさしい」というイメージが、なぜかメディアを通して流布されているような気がしますが、バイデン氏は日米同盟の存在をかなり重要視しており、アメリカ外交の基盤の一つと位置付けているとの評価があるため、私は心配していません。
特に11月13日の菅総理との電話会談において、【尖閣諸島問題は日米安全保障条約第5条に基づいた防衛対象】との言質を日本に与えていることからも、バイデン氏の対日・対中姿勢が垣間見られるのではないでしょうか。
とはいえ、クリントン、オバマという民主党の大統領が立て続けに日本軽視とも取れるジャパン・パッシングを行ったことから、バイデン氏もそうではないかとの懸念はぬぐい去ることはできませんが、クリントン政権時やオバマ政権時に比べ、中国の実力は格段に上がっており、そのほとんどが、アメリカの環太平洋での覇権と正面から衝突するほどのレベルに達していることから、元々の対中警戒論と米国内の超党派での対中強硬論に押されて、その反動でより日本シフトするのではないかと見ています。
これでTPPに復帰してきたり、防衛費増額をトランプ政権と同じく迫ってこなかったりすると、日本シフトは明確になるのでしょうが、どちらも難しいと言えるでしょう。
最後に、もし公約通りに外交を進めようとするのであれば、環境政策面では大きなプラスが生まれることになります。日本を含む各国もバイデン政権下では脱炭素の方向性が急加速し、すでに進めている欧州の施策と相まって、ポジティブな脱炭素競争が加速することから、日本がcompetitive edgeを持つ水素有効利用や、蓄電池の開発、再生可能エネルギーの普及、そしてグリーンファイナンスという部門では、国際協調が復活どころか一気に進むでしょう。
特に4年の任期中に気候変動対策と脱炭素に2兆ドルを投入するという方向性は、技術とエネルギーのマーケットを、心理ごと、大きく転換させ、脱炭素のブースターになるでしょう。これは期待したいと思います。
ただ懸念があるとしたら、本当に公約通りに進められるかという点です。コロナウイルスの感染拡大が一日平均10万人超えのペースで進み、それにつれ、経済も停滞させていることから、恐らく就任後すぐのpriority No.1はコロナ対策と封じ込めになると考えられます。そうした場合、予想していなかったコストが発生し、本当に4年間で2兆ドルという支出が可能になるのか、そしてコロナの公衆保健上の脅威と、経済に与える心理的な脅威を本当に抑えることが出来、再び前向きなコミットメントを可能にするのか。これは本当に4年後の検証を待つしかないでしょう。
そして何よりも、まだトランプ大統領の2期目の可能性がゼロではないという点を再度強調しておかなくてはなりません。十中八九、バイデン新政権が誕生すると思われますが、国際情勢の観点からは、Trump 4 more years!にも備えておかなくてはならないでしょう。
そして、高齢78歳での大統領就任となるバイデン氏が本当に1期を務めあげられるか否かも未知数です。有事には副大統領のカマラ・ハリス氏が大統領代行に就任しますが、外交面は決して経験も知見もあるとは思えないとの印象を持っており、プーチン氏をはじめとする曲者でかつ外交の荒波を何度も乗り越えてきた猛者を相手に、超大国アメリカの影響力を保つことが出来るかは不安です。
期待を持ちつつ、国際協調の舞台に再度アメリカが戻ってくることを願いたいと思いますし、コロナが早期に終息し、各国が協調して世界を回復させるような動きの中心に戻ってきてくれることを祈ります。
皆さんはどうお感じになるでしょうか?またご意見、ぜひお聞かせください。
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