プーチンが思い知らされた大ロシア帝国構想の限界
今や世界第2位で、恐らくもうすぐ第1位に躍り出る中国経済ですが、一帯一路政策をベースにアジア、コーカサス、アフリカ、中東欧への浸透していくチャイナパワーは、同じく増強される軍事力と並行して伸び続け、アメリカと肩を並べようとしています。
ご存じの通り、ここ3年以上、米中対立は激化の一途を辿っていますが、そこにロシアの影響力が働く余地がないという状況になっています。
かつてアメリカと対峙するのは旧ソ連で、その後継者であるロシアとなるはずだったのですが、旧ソ連崩壊後の状況から回復を試みる間に中国が一気に影響力を増し、今や旧ソ連時代の裏庭にも中国の影が濃くなってきました。
以前、中ロ協力のシンボルであり、自由資本主義体制への対抗軸としての国家資本主義体制の基軸となるとお話しした共同エネルギープロジェクトである【シベリアの力】についても、交渉における目的を達成したのは、「エネルギーの安定的な調達」を確保した中国であり、ロシアとしてはただ天然ガスと原油の売り先を確保した程度に止まりました。
またその後、ジョージアなどに伸びてくる中国の陰に対しても、危機感は感じつつも抵抗できないという状況を思い知らされ、プーチン大統領は屈辱を味わい、ロシアの影響力の低下を思い知り、そして自身が描き続ける大ロシア帝国構想の限界を知ることになったようです。
旧ソ連崩壊から来年末で30年になりますが、崩壊後の混乱から立ち直るために要した20数年の間に、欧米諸国に衛星国を次々と攻略され、ずっと友好国でありつつ下に見ていた中国にもあっさりと追い抜かされてしまいました。プーチン大統領のリーダーシップの下、随分と力を取り戻してきたと思われますが、かつての見る影はありません。
しかし、まだアメリカと並ぶ世界最大の核保有国であり、また軍事力もトップレベルですし、プーチン大統領の食指もアフリカや中東、ラテンアメリカ諸国にまで再度伸びてきており、中国と対峙・協力しつつ、国家資本主義の拡大に勤しんでいます。
そして、実戦経験があり、配備後すぐに使えるロシア製の武器は、今、途上国や中東諸国を中心に拡大していっています。
今年、世界を襲ったコロナウイルスの感染拡大が国際協調の枠組みを崩し、世界がブロック化してきている今、ロシアも確実にかつてほどの威力はなくとも、自らの勢力圏としてのロシアブロックを再拡大させているように思われます。また、憲法改正を経て、大統領をもう数期務めることが出来るようになることから、ロシアのために、プーチン大統領は死ぬまで大統領を辞めることが出来なくなり、死ぬまで大ロシア帝国構想の実現のために、あれやこれやと手を尽くすのでしょう。
しかし、その力も、国内での人気の陰りと国際社会での影響力の低下を受け、衰えを隠せません。アフターコロナの世界において、ロシアはどのような役割を果たし、そしてどのような影響力を持つのか。
そしてアメリカの新しい大統領が決まり、就任するとき、そのアメリカはプーチンのロシアとどう付き合うのか?
その内容によっては、国際情勢は大きく変わるため、これからの数年間、ロシアから目が離せません。
皆さんはどうお感じになるでしょうか?またご意見、ぜひお聞かせください。
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