戦犯は菅・二階。GoTo効果は再度の「緊急事態宣言」で吹っ飛ぶ

 

だが、筆者は変わらず思うのだ。「Go To」をやるなら、PCR検査の拡大などにより、安心して人々が動き回れる状況をつくるべきで、そのためであれば、いくら予算をつぎ込んでもかまわないではないかと。なによりの経済対策はそれであろうと。

ところが、政府は「Go To」がもたらす負の側面をあえて無視し、突っ走った。あたかも建設すれど核廃棄物の捨て場所を考えず「トイレなきマンション」と称される日本の原子力発電所のように。

アベ・スガ政権が頼りにしたのは、科学的知見にもとづいた政策ではなく、まじめな日本人の国民性である。菅首相が提唱する「静かなマスク会食」はその象徴といえる。

会食はマスクをして、食べるときに外し、しゃべるときにつける。それなら「Go To」で旅に出ようが、食事に行こうが、イベントに集おうが、大丈夫だ。日本人にはそれができるのだと訴える。

もちろん、マスクをして会話することが感染防止に有効であるのは証明されている。だが、それは対策のごく一部だ。人が移動し、接触し、会話する場面が増えれば増えるほど、どれだけ気をつけていても、感染は拡大してゆく。

「Go To」を呼びかけたツケとして自粛ムードが極端に緩み、世に“三密”がはびこった。経済のためにこれを容認するため、マスクで防御できると言い募っているようにも見えるのだ。

「Go To Travel」の見直しは、誰よりも、菅首相、そして全国旅行業協会会長でもある二階幹事長にとって、痛恨事であろう。

今年10月23日に開かれた、二階氏の派閥「志帥会」の政治資金パーティーは、JTBの田川相談役の講演があり、菅首相が挨拶をするなど、さながら「Go To Travel」促進大会の感があった。

週刊文春の取材にJTBの“ドン”田川相談役はこう語っている。

「政治の力がないと、いろんなことができないですから。インバウンドをやるときのビザの緩和とか。二階さんとは(関係が)深いですよ。観光について造詣が深いしANTA(全国旅行業協会)の会長をずっとやっているので、現場をよくご存じです。菅さんも、新しいツーリズムのあり方を考えていらっしゃる。2人に共通するのは、地方の活性化のために観光が大事だと理解してくださっている点です」

JTBが日本最大の旅行会社で、最も「Go To Travel」の恩恵に浴していることは言うまでもない。

菅首相は官房長官だった2018年1月、旅行業界の「新春講演会」で講演し、観光立国に向けた政策をさらに進める姿勢を強調した。同年10月にも「北海道を観光で盛り上げる会」に二階幹事長らとともに出席して、観光関連企業の面々に存在感をアピールしている。

これだけ観光・旅行業界に食い込み、支持を受けている菅首相、二階幹事長のこと。新型コロナウイルスが突如として出現し、ばったり人の姿が途絶えた新幹線の駅や空港の風景などは、見るに耐えなかっただろう。外出自粛ムードがいつまでも続くのはどうしても避けねばならなかった。

そこに浮上したのが安倍政権の今井尚哉・首相補佐官と新原浩朗・経産省経済産業政策局長が発案したとされる「Go To キャンペーン」だ。

具体的な絵は内閣官房に電通から出向している職員に描かせたのだろうが、持続化給付金事業にまつわるダミー法人疑惑を端緒に、電通への巧妙な事業丸投げシステムが露呈し、今井・新原コンビは動きがとれなくなった。

それに乗じて、「Go To キャンペーン」の主導権を握ったのが菅・二階コンビだった。もともとこのキャンペーンはコロナ感染がおさまったあとの景気対策として浮上したもので、当初は8月中旬のスタートを予定していた。

しかし旅行業界の窮状を見た菅・二階コンビは強引に「Go To Travel」の開始日を7月22日に前倒しさせ、その後はみごとなまでの旗振り役をつとめてきたのである。

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