もっと言えば、小池さんにしても「国政レベル」で「経済と対策のバランス」を捨てて、自分の口がペラペラしゃべっているように、そしてそのように世論を煽っているように「対策の方にシフト」して、その分、「幅広く支援金を出す」という度胸はないのだと思います。
財務省の財政規律教という僧兵、一部をダイレクトに助ければ他から文句が来るという官邸の世論恐怖症を抑えて、国際債券市場からカネを引っ張ってきて、徹底的にバラまく代わりに、感染対策で経済を一時的に止めるなどという、共産党もできないような徹底的な霞が関の革命をやり切る、そこまでの「腹のくくり方」ができる人ではありません。
一つ違いがあるとしたら、今回の相手が安倍氏ではなく菅総理だということです。今回の低姿勢会見などを見ていると、安倍氏とは少し違いがあります。まず「少なくとも問題の隅々まで実感を含めて理解している」という点では、菅総理は安倍氏よりも相当に「まし」です。
また、菅総理の「低姿勢」の裏には、小池に対して「攻めたければ攻めさせる」、それを完全に受け切る、受けて受けてその上で、小池が「スベれ」ば、後ろから刺すスキが生まれるという計算があるのかもしれません。
本当は、菅総理が「地方経済の心肺停止」と「医療負荷」の厳しいバランスの「真ん中にある真空」を孤独に歩む覚悟をして、一方の小池知事は「財政規律をかなぐり捨て」て「経済を止めて人命優先でワクチンを待つ」という選択肢を正々堂々と掲げ、そのチョイスは世論に委ねるというようなことができれば良いのだと思います。ですが、世論は世論で、そんな責任をかぶるのは「ごめん」だと思っているのかもしれません。
だからこその「小池劇場」ということであるのなら、やはりこの「政局」には騙されないようにした方が良いと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋・文中一部敬称略)
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