危機管理のプロが断言。コロナ禍に故・野中広務氏が必要だと感じた訳

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一時期に比べて落ち着いてきたものの依然として予断を許さない、新型コロナウイルスの感染拡大。この未曾有の危機を迎えている日本に、かつて自民党幹事長、官房長官を歴任し2018年に亡くなった故・野中広務氏がいてくれたら…と思いを馳せるのは、軍事アナリストでメルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する小川和久さん。小川さんは、世間でも評価が真っ二つに分かれている野中氏が、いかに決断力、行動力、判断力などに優れていたかを実際に経験したエピソードを交えて紹介しています。

コロナの時代には野中広務が必要

1月26日は、野中広務さんのご命日でした。2018年のこの日、92歳で旅立たれました。

自民党幹事長、内閣官房長官などを歴任し、私が仕事でご一緒させていただいた政治家の中でも、特に印象に残っている人です。

なぜ野中さんのことを書くのか。

それは、現在のコロナ対策の有り様を前に、野中さんが首相だったら、自民党幹事長だったら、もっと望ましい展開になっていただろうと思わずにいられないからです。

野中さんを嫌いな人や誤解による先入観を抱いている人も少なくありません。野中さんに対する毀誉褒貶は相半ばします。しかし、それでも野中さんのような政治家が今ほど求められることはないと申し上げたい。

私は小渕恵三政権が発足して2週間後、官房長官の野中さんと出会い、その場で意気投合しました。そして、その2週間後に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を目指してテポドン1号を太平洋に向けて発射すると、日本が偵察衛星を持つための計画を練り上げるよう、私に指示が下りました。

いま、官僚機構のトップにある杉田和博内閣官房副長官が内閣情報調査室長として司会を務め、政府側は古川貞二郎内閣官房副長官ら7人が出席、極秘の会合が行われました。その場で私が提案した構想が3ヵ月後に現在の情報収集衛星という形になり、閣議決定されます。

とにかく、ずば抜けた判断力、決断力、実務能力、行動力を備えた野中さんの動きは速いのです。相手の肩書きなどに関係なく、私のような者でも起用する。政治家と官僚は野中さんを評価していますから、野中さんを嫌いな杉田さんのような官僚でも忠実に動きます。

私が野中さんと仕事をしたのはきわめて短い期間でしたが、野中さんは私の提案を容れてドクターヘリを実現し、防衛省・航空自衛隊の悲願だった空中給油機の導入にも、亀井静香政調会長の反対を抑えてゴーサインを出したのです。

以上については拙著『フテンマ戦記 基地返還が迷走した本当の理由』(文藝春秋)に詳しく書いてありますが、私は手柄話や自慢話をするつもりはありません。ほかにも、野中さんが評価をし、任務を与えられた人はいるからです。マスコミにも広く目を配っており、例えばNHKの大越健介さんには政治家としての資質があるとして、誕生日の食事会を計画したほどです。

何度も繰り返し発信してきたことですが、コロナ対策に象徴される危機管理では、最優先課題、コロナの場合は感染拡大防止を実現するための順序を、それも瞬時に決められるだけの判断力が求められます。

いま菅義偉首相に必要なのは、野中さんのような能力です。菅首相にその能力が欠けているにしても、それで引きずり下ろして済む訳ではありません。政府・与野党を挙げて判断力、決断力、実務能力、行動力を備えた人材で菅政権を固め、コロナの時代を乗り切らなければなりません。野中さんの命日にあたり、そう願わずにはいられないのです。(小川和久)

image by: shutterstock.com,  English: Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat日本語: 内閣官房内閣広報室, CC BY 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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