そもそも、がんの手術で生存期間が延びたことを立証した臨床試験は一つも存在しません。欧米では1980年代から、がんの手術は行わず抗がん剤治療のみを行ってきました。さらに、1988年にアメリカ国立がん研究所が、「がんの病因学」という報告書で「抗がん剤は増がん剤である」と指摘。また、抗がん剤の多用でがんは小さくなるが、命は短くなるという報告もあり、2000年以降は抗がん剤治療から、免疫や遺伝子医療などの代替療法などにシフトしています。
日本と欧米の違いは他にもあります。
日本の医療は医療側の視点で治療が進められますが、欧米では患者視点です。現在の医療ではがんを確実に予防する手段はないし、早期発見でない限り、がんを確実に根治するのは極めて難しい。ならば、がんを患った場合、「棲みついたガンとともに、どう生きるか?」を選択するのは患者であってしかるべきです。
そのためには、医師には極めて高いコミュニケーション能力が求められます。そこで徹底したコミュニケーションの教育に加え、患者の意思決定に「いつ、どんな、どのように知識の提供をすることが効果的か?」といった「意思決定のプロセス」の教育と研究も広く行われているのです。
是非とも、件の研究グループには「抗がん剤治療をした人」と「しなかった人」の寿命とQOLを比較する調査研究を、年齢などの属性別に比較検討してほしいです。
個人的な話になりますが、私の父はすい臓がんが見つかったとき、「このままだと余命2ヶ月、抗がん剤治療をすれば1年を目指せます」と医師に言われ、抗がん剤治療を受けました。結果的に7ヶ月がんばりましたが、その間には色々あり「本当に抗がん剤治療がベストの選択だったのか?」という思いが、私の中に残っています。
というか、父には「治療できる」こと自体に光を見出していたので、「ベストだった」と信じるしかないのですけどね…。
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