今回、取り上げさせていただくのは、不動産銘柄のLCホールディングス<8938>です。「山王<3441>水素透過膜・導電性粒子」「テノックス<1905>地盤改良フランチャイズ」の2銘柄に続き、またその事業価値が大きく変わろうとしていることを皆様にお伝えしたいと思います。(『億の近道』相川伸夫)
プロフィール:相川伸夫(あいかわ のぶお)
現役の「サラリーマン」兼「投資家」。自ら「情熱投資家」を名乗る。大手技術系企業に勤務する傍ら、積極的に企業にアプローチして内容を吟味したうえで投資をすることを旨としており、その行動力と分析力はプロも舌を巻く。
資金調達力が倍増。LCホールディングスの成長戦略に本気を見た
サブリース専門から脱却、LCホールディングスの事業内容
LCホールディングスの本業はサブリース事業(オーナーから借り上げした土地・建物等-倉庫・店舗・駐車場・土地など-をテナントに転貸する方式)であり、業績は安定そのものです。「同じ形態を安定的に継続しているだけでは企業としての寿命が果てるのを待つだけである」という代表の熱い想いから、「サブリース専門→サブリース兼不動産ファンド銘柄」へと改革が始まりました。
サブリース事業に続く第2の核事業として不動産ファンド事業に注力していくにあたり、同社は会社名を「ロジコム」→「LCホールディングス」と変更して組織も一新。昨年10月に再スタートを切りました。
LCホールディングスは、不動産ファンド銘柄の先駆け的存在「ダヴィンチホールディングス」と2016年3月末に資本業務提携を完了。今はフィンテックの1つであるソーシャルレンディングも手掛けています。
同社がいま取り組んでいるのは「出口戦略」であり、社長の挨拶としてこう書いています。
出口戦略とは、当社グループが組成する上場リート(不動産投資信託)にファンド保有物件を売却すること。その結果、上場リートはより多くの物件を、より安定的に取得することが可能になり、当社グループにおいては、より多くの物件でのフィービジネスの展開が可能になります。
今回の内容は、特に難解かもしれません。しかし、そこにこそまだ多くの方が気づいていない果実があるのではないかと思って、リサーチしています。専門的な言葉も多く、システムも複雑な不動産ファンド事業です。理解するだけでも高難度ですので、極力ざっくりと説明することを心掛けます。
成長の要「不動産ファンド事業」の中身
・複数の人から資金を集めてファンド事業者が投資を実行する
LCホールディングスはこれを行っています。そして、手数料を抜いた残りの利益(損益)を資金提供者に再分配する(この仕組みを「ファンド」と言います)。つまり、「信用を担保に資金を借り入れ、物件を取得し、賃貸収入などの利益で借金を返済する」ということをしています。この錬金術はすごいなぁといつも感心してしまいます。
では、不動産ファンド事業で大きく稼ぐためには、何が重要なのでしょうか?
- 収益率の高い高条件の物件を見抜く(安く取得すること)
- 物件を買うための資金提供者の募集(資金がなければ物件は取得できない)
この2つは当然必須です。特に(2)は重要です。仮にこれが「融資」であれば、自分で例えると、手持ちの金融資産と給与収入に見合った金額に応じた金額までになってしまいます。企業においても「融資」であれば同様です。
ファンドの場合は、その上限は基本的にはありません。ダヴィンチホールディングスは数年で運用資産1兆円まで行った実績があるほどです。この(2)を強化するために同社は「ソーシャルレンディング」を手掛けました。これこそが最も特徴的ではないでしょうか。
Next: 資金調達力を劇的に高めた「ソーシャルレンディング」
資金調達力を劇的に高めた「ソーシャルレンディング」
・「金を借りたい人(事業者)」と「金を貸したい人(投資家)」をインターネット上で結びつけるサービス
LCホールディングスはこれに着手しました。クラウドファンディングという横文字を耳にしたり、目にする機会も増えてきたと思います。今までの常識では「金を貸して金利収入を得る」というのは一般個人にはハードルが高いものですし、その手段もほぼ無かったことでしょう。金利収入は得難いからとマンションを自分でローンを組んで買い、それを貸し付けて賃貸収入を得るというのは、今でもよくある手法です。「フィンテック(finance[ファイナンス]とtechnology[テクノロジー]を掛け合わせた造語)」の発達により、今では少額から金利収入を得られるように時代は進化しました。
・LCレンディング
これは、LCホールディングスの子会社が手掛けているソーシャルレンディングの1つです。
個人投資家は少額(2万円)からの投資が可能で、年利5%~年利10%もの高利回りが期待できるものです。
LCレンディングの取り扱っている案件は、LCが得意とする商業施設が多いです。目的は物件取得用の資金集めがメインとなっており、「LCホールディングス保証付き案件」であれば、LCが破産しない限りは元本保証の金融商品となっています。比較的ローリスクミドルリターンの金融商品と言えます。
したがって、例えば年利5%のものに100万円を1年預けたとすると…
例)100万円×年利5%=5万円の収入
になります。利益には税金約20%が源泉徴収されます。
今までは、サラリーマンがこの手の収入を得ようと思ったら、「大家さんになる」しかないのが常識でした。
ここでのポイントは、なぜLCホールディングスはソーシャルレンディングを始めたのか?ということです。「金利差益を手に入れるため!」…という収益面の理由があるかもしれませんが、これは真の目的ではありません。真の狙いは、「資金集めの速度を加速度的に倍化させるため」にあります。
Next: LCホールディングスの真の狙い、成長にかける野心とは
LCホールディングスの真の狙い、成長にかける野心とは
同社のLCレンディングはまさに成長の源泉です。2015年7月にスタートした当初のレンディングの投資家人数は461人。それからわずか1年半で、5倍近くの2000人に迫ろうかという勢いを持っています。
今期の3月末のレンディングの成立ローンの総額目標は60億円でしたが、10億円も上回って着地。レンディングに資金が集まれば、多くの収益物件を自分の財布を使わずに運用することができます。恐らくこの業界で一番早くレンディングに手を出したのは、上場銘柄の中ではLCホールディングスではないでしょうか?
オーナーから物件を預けてもらい、賃貸管理をすることで収益を得るのがサブリース事業でありLC最大の武器です。今回、その武器を活かしつつ収益を拡大するために、ファンド事業に注力しています。
受託資産残高が増えれば増えるほど利益が大きくなる。その受託資産=ファンド事業なので、LC単独ではなくレンディングに出資する投資家にもリスク分散させている。ここにダヴィンチホールディングスの運用ノウハウと顧客も取り入れ、日本だけではなく、海外の投資家からもファンドへの出資を現在進行形で画策しているわけです。
成長銘柄への資質~勘定項目の改定
今期2017年3月期の決算予想
売上高:66億
営業利益:4億5千万
経常利益:4億
純利益:1億
2017年4月5日(水)終値は913円、現在の時価総額は50億の小型株です。
LCホールディングス<8938> 日足(SBI証券提供)
2016年2月19日の東京証券取引所における普通取引の終値673円(分割前1,345円)に対して28.1%のプレミアムを載せて862円(分割前1,723円)でダヴィンチは資本業務提携をしました。
2017年3月期第一四半期決算から不動産の保有目的の変更に伴い、勘定項目に大幅な変化が発生しています。今までも不動産の売却によって利益が出ていても、掛け目が固定資産であったために売り上げや営業利益には一切反映されない投資家泣かせの決算でした。これも多くの投資家に見向きされなかった要因の1つでしょう。
現在、貸借対照表の「販売用不動産」の項目には120億もの資産が計上されています。
冒頭で書かせて頂いた出口戦略「当社グループが組成する上場リート(不動産投資信託)にファンド保有物件を売却すること」。この場合、当然売り上げも営業利益も決算に反映されます。
勘違いしてはいけないのは、その日が頂点なのではなく、その日が成長への始まりなのです。リートが上場できれば、保有する物件は増えていきます。リートの仕組みによって投資家に対して配当(賃料)をもたらします。
LCホールディングスは、リートの物件すべての管理をすることで安定的に成長するフィービジネスを確立できるのです。新規物件を上場リートへの販売する売り上げがたつこともあるでしょう。
この10年間の売上高は最低56億~82億です。これを右肩上がりの成長グラフにできるかどうかのタイミングは、まさに今です。
Next: LCホールディングスの本気度がわかる事例
LCホールディングスの本気度がわかる事例
LCの本気度を示す根拠として、2月20日付での有償ストックオプションのIRにも着目すべきです。※ストックオプションとは役員や従業員を奮起させる新株予約権のこと。
・ストックオプション行使条件
1)割当日(平成29年3月8日)から平成32年3月31日までの間において、終値が一度でも1,500円を上回ること
2)株式会社LCパートナーズ(LCホールディングスの子会社であり、リート上場の要の部門)の平成30年3月期から平成32年3月期のいずれかの期の確定した単体の損益計算書における当期純利益が2億8千万を超えること
…が主な要件です。
LCパートナーズが、今回の上場のカギを握っています。だからこその「ストックオプション発行」。このストックオプションのIRがあるかないかによっても、会社の本気度が変わります。会社の本気度というのは、とどのつまり、その中で働く生身の人間の本気度に直結するといっても過言ではありません!
投資家側としては、なんとしてもここをがんばって欲しい。会社の役員にとっても、特大ボーナスであるストックオプションをなんとしても行使したい。しかもこの権利が3年以内の時間制限付きなところが、とてもアツいと感じてしまいます。
時価総額50億の会社が『億の近道』になるかどうか…。同社の「本気」に期待するとします。
『億の近道』(2017年4月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
億の近道
[無料 週3~4回]
個人投資家の方にも機関投資家並み、若しくはそれ以上の情報提供をするのが目的です。株式で「億」の資産形成を目指しましょう!我々マーケットのプロが導きます。各種コラムが大好評!内容に自信アリ。