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シャープ株式会社公式サイトより引用

経営再建を目指すシャープ、投資家はどう見ている?

苦しい経営が続くシャープですが、投資家の多くが気になっていることといえば「これからシャープは再浮上するのか」「シャープは買いなのか」という点でしょう。これについてまぐまぐの人気メルマガ『プロの視点。今、乗るべき銘柄が見えてくる。』では現在シャープが置かれている状況などについて詳しく解説しています。

株価急落のシャープ<6753>は買って良いのか悪いのか?

プロの視点。今、乗るべき銘柄が見えてくる。』(2015年5月16日号)より一部抜粋

2015年3月期の決算シーズンが終わり、日経平均株価は20000円を前に方向感が見えにくい状態となっている。

今後は決算内容を精査しながら個別の値動きになってくるが、こうしたなかで、マーケットの注目を集めているのがシャープ<6753>だ。

9日の日経新聞において、経営再建策の1つとして資本金を1218億円から1億円に減らす「減資」を検討していると報じられたことで、株価は一時ストップ安まで売り込まれた。

資本金が1億円以下になるということは、税法上「中小企業」とみなされ、大企業に比べて税負担が軽減される。

実際には、減資は1億円ではなく5億円だったが、財政状態が厳しいことに変わりはない。

一方、株価は大きく下落しているため、弊社で実施している無料銘柄診断でもシャープを買っても良いかどうかという問い合わせが非常に多い。

本日は現在のシャープが置かれている状況と、果たして大幅に下落した株価が買えるのかどうかについて解説をしてみたい。

シャープが中小企業になる? 99%の減資とその後に見える増資

最初に、シャープが行った「減資」について解説しておこう。減資というのはその名の通り「資本金を減らす」ということだ。「資本金」とは簡単に言うと、「最初に出資した資金」であり、株式会社なので出資した資金に応じて株式が株主に分配される。

そして、資本金から仕入れや生産をして販売を行い、利益が出た分が「利益剰余金」となる。非常にシンプルに言えば、毎年利益を出すことで、資本金の額は変わらずに利益の分だけ利益剰余金が増えていくということになる。

一方、赤字が続けば利益剰余金が減少していくこととなり、マイナスになってしまう。シャープは2013年3月期に利益剰余金がマイナスとなり、翌14年3月期にプラスとなったものの、今回2223億円の大幅赤字によって再びマイナスとなった。

さて、改めて減資についてだが、減らした分の資本金は前述した剰余金に振り替えられる。つまりシャープは資本金1218億円を5億円に減らして、利益剰余金のマイナスを解消しようとしているのだ。

ただし、前述のように減資は単純に帳簿上の処理(資本金→剰余金)だけなので、減資そのものによって直接的には株価に影響がない。

では、なぜ利益剰余金がマイナスだとまずいのか。実は、利益剰余金がマイナスの状態では、株主に対して配当が行えない。配当が出せない状況になると、株価が低迷するほか、今後「増資」をする際に集まる資金の額が減少してしまう。

増資とは資本金を増やすことだが、基本的に新たに株式を発行することになるため、1株あたりの価値が減少して株価が下落する。

直接的には株価に影響がないはずの減資によって、シャープの株価が急落したのは、もちろん中期的には経営状況の悪化が嫌気されたものだが、今後の増資を意識したものでもある。

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シャープの業績はどうなっている? あのシャープがまさか・・・

「あのシャープがまさか倒産することはないだろう」、「これだけ下がったところで買っておけば、いつか必ず株価は戻ってくるだろう」。これが、今シャープを買いたいと言う投資家の意見のようだ。

これが正しいかどうか、まずは14日に発表した2015年3月期の決算をみてみよう。売上高は前期比-4.8%の2兆7862億円、営業利益は前期の1085億円から、480億円の赤字に転落している。

最終損益は2223億円の赤字(前期は115億円の黒字)となり、2016年3月期も最終赤字となる見通しで、単体では前期の時点で負債が資産を上回る「債務超過」に陥り、「継続企業の前提に関する重要な疑義」が付いて事業存続が危ぶまれる状態となっている。

ポイントは、これが今に始まったものではないという点だ。シャープは12年3月期に3760億円、13年3月期に5450億円という巨額の赤字を計上して経営危機に陥ったとき、人員削減などの構造改革と、みずほ銀行・三菱東京UFJ銀行の支援によってかろうじて持ち直した経緯がある。

そして、14年3月期に黒字化したことで最大の危機は去ったかに見えた。しかし、今年2月に発表した2015年3月期の業績予想において、300億円の最終黒字見込みから300億円の赤字に転落すると修正。

さらに、4月には最終的に赤字額が2000億円超まで拡大すると発表され、一気に経営危機が再燃した。前述の99%を超える減資は、通常なら最終手段ともいえる策だ。

シャープを買うなら絶対に見ておくべき「中期経営計画」

個人投資家の「あのシャープがまさか倒産することはないだろう」という意見は、ここまでの内容から判断すれば残念ながら同意できない。

シャープなら誰かが救済するという見方もあるが、すでに支援はされているし誰も慈善事業ではやっていない。シャープの一部が欲しいなら、株式の価値がゼロになってからでも間に合う。

では、シャープの株は上がらないのかというとそうとも言い切れない。これまで業績や財務について書いてきたが、結局のところポイントとなるのは「今後黒字化していけるかどうか」に尽きる。

つまり、シャープはなぜ赤字になっているのか、そして黒字化できる見込みはあるのか、黒字化できると信じるならシャープの株は買えると判断することになる。

そして、そのために是非とも見ておきたい資料が、14日に発表された「中期経営計画」だ。

シャープ「2015~2017年度 中期経営計画

中期経営計画では、5億円への減資や主力行の出資による資本増強、希望退職3500人など人員削減で今期の固定費285億円を削減、本社の売却などが発表された。

また、計画では構造改革の効果によって今期は800億円の黒字になる見込みとなっており、来期は最終損益も黒字化するとしている。これが達成できるならシャープは復活するが、残念ながらこれは「計画」という名の「目標」でしかない。

実際に、2年前に発表した前回の中期経営計画では、営業利益は計画の半分にも達していない。今回も計画通りに行くとは考えにくいだろう。

シャープを買うかどうか迷っている投資家へ

今回のシャープのケースから思い出されるのは、2005年のダイエーだろう。経営状況の悪化によって、資産の売却をすすめたダイエーは、約1200億円の資本金を5億円に減資した。事業悪化、本社の売却、資本金の額と5億円への減資など、シャープとよく似ている。

その後ダイエーは増資を行い、負債はピーク時の3兆円から約2年後の2007年には6000億円まで減少した。しかし、業績を回復させることはできずに最後は7期連続で最終赤字を計上し、2014年12月に上場廃止となっている。

シャープがダイエーと同じ道を歩む可能性は十分にある。一方で、減資以降には短期間で株価が2倍以上になるような場面もあった。これは再建への期待が膨らんだからだ。

おそらくシャープもそういった短期急騰の場面はあるだろう。ただ、急騰したとしても、株価が100円まで下がってからの上昇かもしれないし、50円から100円の上昇になるかもしれない。その上昇を捉えたいというのであれば、投機として楽しめるだろう。

しかし、今シャープの株を買おうとしている投資家には、一言だけ言わせてもらいたい。「3000以上も銘柄があるなかで、なぜ敢えて危険なシャープを買うのか。」

シャープ以上に安全で、上昇余地の大きい銘柄は日本の株式市場にいくらでもあるということは、ここではっきりと言っておこう。

プロの視点。今、乗るべき銘柄が見えてくる。』(2015年5月16日号)より一部抜粋
 

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