東京五輪にむけて羽田空港を発着する国際便を増やすために、都心上空を飛ぶ新ルートが決定。来年3月の運用開始ですが、騒音問題が取り沙汰されています。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年8月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
五輪のためなら許される?渋谷は上空で目覚まし時計が鳴る状態に
「1時間に30便」都心上空を旅客機が飛ぶ
東京五輪にむけて、羽田空港を発着する国際便を増やすために都心の上空を飛ぶ新しいルートの運用が、来年3月から開始することが決まりました。
都心を低空飛行するため、騒音や落下物の問題が取りざたされています。
着陸離陸とも海上を通る現在のルートに、新たに都心からアプローチするルート2本が設けられます。
A滑走路とC滑走路にアプローチするルートで、海外便が集中する15時から19時の間、南風好天時はA滑走路アプローチルートは1時間に14便、C滑走路アプローチルートは1時間に30便飛ぶことになります。つまり、C滑走路アプローチルートは2分に1回は飛ぶことになります。
新宿や渋谷の上空を通過。大井町では高度305mの低空飛行も
A滑走路アプローチルートは、
浦和 成増 中野 代々木公園 渋谷 恵比寿 目黒 白金 大崎 大井町
C滑走路アプローチルートは、
川口 北赤羽 新宿 代々木 広尾 白金高輪 品川 天王洲アイル
を経て、羽田空港に向かいます。
都心に入ったところで高度を下げてくるようです。新宿駅付近で約915m、より空港に近い品川区の大井町駅付近で約305mといった低空飛行になります。
新ルートができることで、国際線発着数は年間約6万回であるのが9.9万回に増え、年間6,503億円の経済効果が見込まれるとしています。
Next: 深刻な騒音問題、渋谷では目覚まし時計が鳴っている感じ?
騒音問題
このルートの着陸機は1時間あたり最大44便で、「騒々しい街頭」と同程度の70〜80デシベル(dB)の騒音が出るとの試算を国交省が明らかにしています。
国交省は騒音対策として降下角度を通常の3度から3.5度に引上げるとしています。騒音低減効果は1デシベル(dB)程度とされています。
ほとんど低減効果はないという感じですね。2デシベル(dB)以上でないと低減は体感できないそうです。
降下角度が急になると、パイロットの視野も変わり負担が大きくなるという指摘もあります。
騒音に関するデータですが、
深夜の住宅街:30〜40dB
静かな事務所内:50dB
通常の話し声:50〜70dB
街路沿いの住宅街:65〜75dB
幹線道路際や掃除機、騒々しいといわれる街頭:70〜80dB
パチンコ店:90dB
電車のガード下:100dB
だそうです。
渋谷では目覚まし時計が鳴っている感じ
飛行機の音は60〜80dBで、新ルートの高度から考えると、渋谷や恵比寿あたりではこのレベルに達するそうで、大井町では間違いなく飛行機の音が「騒音」になっていることでしょう。
東京都の環境基準によると、都心部の昼間(6時〜22時)の規制値は60dB以下だそうです。
新宿では電話が鳴り続いている感じ、渋谷では目覚まし時計が鳴っている感じ、大井町では地下鉄車内で暮らしている感じだそうですよ。
大井町では防音窓が必要でしょうし、タワーマンション高層階は大変でしょうね。高層階ほど販売価格は高くなるのにねぇ〜。
すべては東京五輪のため?
東京湾の上空を通って着陸するルートしかない羽田で、都心上空を通る新たなルート案を国土交通省が公表したのは2014年のことです。
東京五輪にどうしても増便したいという政府の思惑から、この時期に決定しないと間に合わないという、すべて東京五輪のために急いでいるのです。
東京五輪のためなら何でも許されるのか…。
Next: 住民への説明が足りなすぎる。急ピッチの新ルート運用決定に反対運動も
住民への説明が不十分
国交省が東京23区と都下5市と連絡会を設けたのが7月30日のことです。その後、8月7日に国交省と関係自治体の協議会が開かれ、8日に新ルート運用決定を発表しています。
十分な住民への説明がなされているとは到底思えません。
石井国交大臣は、来年3月29日夏ダイヤからの新飛行経路の運用開始及び国際線の増便を行うと発表したことを受け、羽田問題解決プロジェクトという住民団体が「納得できない」と決定を受け入れない姿勢を示しています。
落下物が出やすい着陸態勢に入るのが都心上空になることもあり、住民からは、騒音や落下物を懸念する反対の声が上がっています。
渋谷・品川区議会が、新ルートの見直しを求める決議を可決しています。
今後は、これから12月にかけて飛行検査を行い、来年3月までに乗客を乗せて試験飛行を行い、2020年3月29日に新ルートの運用が開始されます。
事故増加?羽田は「世界一着陸が難しい空港」になる
横田基地上空を中心に1都9県にまたがる空域は米国に管制権がありますが(日本の空なのに日本のものではない空域)、今年1月に双方話し合いのもと、米軍は旅客機の通過時間帯を午後の短い時間に限ることなどを条件に、日本側の管制を容認することになりました。
羽田空港発着便増加にともない、デルタ航空は成田便をなくして、すべて羽田便に統一するそうです。
降下角度を3.0度から3.5度に上げることで、ある専門家は「羽田は世界で最も着陸が難しい空港になる」とし、さらに尻もち事故などが多発しかねないと危惧しています。
Next: マンション価格に大きな変化。さらに羽田新ルートの影響は皇族にも?
羽田新ルートの影響はこんなところにも…
一部の都心部マンションの価格に大きな影響を与える恐れがあると話題になっているそうです。
分譲マンションの場合は、騒音対策をしたくても個人で防音サッシへ交換できません。防音サッシへの交換は共有部の大規模改修扱いになり、マンションの管理組合の過半数の賛成が必要になります。
羽田空港新飛行ルートのほぼ直下に、上皇ご夫妻が仮住まいされる高輪皇族邸(東京都港区)があることがわかりました。宮内庁幹部は「皇族邸が羽田新ルートの下にあることは承知している。上皇ご夫妻にはお伝えし、ご理解をいただいた」と話しているそうです。
これがオリンピックを誘致するということなのです。
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『らぽーる・マガジン』(2019年8月12日号)より一部抜粋
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