東京五輪会場のお台場の海から基準値を超える大腸菌が検出された問題で、組織委は「会場変更の必要はない」との立場を貫いている。一般人は遊泳禁止の区域で、条例変更をしてまで世界大会を開催するのだ。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年8月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
決して「水に顔をつけてはいけない」海でも、国際大会ならOK
トライアスロン会場の海水からトイレの臭い…
2020東京五輪・パラリンピックでのトライアスロンのテスト大会を兼ねたワールドカップが行われ、8月17日のパラのテスト大会はスイム(水泳)が中止となり、ランとバイクの「デュアスロン」に変更されました。
スイム中止の理由は、海水から基準値を超える大腸菌が検出されたからです。
「正直臭い…」「トイレのような臭いがする…」。
これは、その前の8月11日に開かれたオープンウォータースイミングのテスト大会に参加した選手からの悲鳴です。
国際トライアスロン連合では、大腸菌の数値などから水質を4段階に分類、16日の検査結果は最悪の「レベル4」に該当する数値だったのが、17日に「レベル1」まで下がったため、18日は予定通り行われたと説明されています。
たった1日で「レベル4」から「レベル1」まで大腸菌数値が下がるのか…。
この1日で推知が改善されたことに関し、ITU副会長でもある日本トライアスロン連合(JTU)の大塚真一郎専務理事は「強い日差しで大腸菌が死んだということ。ある程度、予想はしていた」と話したとあります。
大腸菌は真夏の太陽に弱かったとしていますが、この状況で、お台場海浜公園で世界大会を行うことはどうなのでしょう。
事実、トイレを含む「生活排水」が流される東京湾
東京五輪・パラリンピックの公式サイト「TOKYO2020」には、このお台場海浜公園で、五輪競技としてマラソンスイミングとトライアスロンが、パラリンピック競技ではトライアスロンが行われることになっています。
「海や緑の自然と、レインボーブリッジなどの未来的景観が融合した観光スポットである台場地区にある公園」と紹介されていますが、ここは、東京都民のトイレを含む生活排水が流される東京湾なのです。
ついこの間までは、屋形船の排泄物も流されていた場所です。
2017年の水質・水温調査では、国際水泳連盟の定める基準値よりも7倍、トライアスロン連盟の定める21倍の大腸菌を検出する日があったそうですよ。
大雨が降ったあとの水質が特にひどいそうです。
一度に大量の雨水が下水菅に入ったとき、汚水処理されないまま川へ流れることがあるそうです。汚水混じりの雨水が河川や海などに放流されることがあるようです。
お台場の地形は湾の奥で、水が動かない地形となっているので、いったん汚水が入るとなかなか抜けない状態だそうです。
小池東京都知事は現地視察した際、「昔はもっと汚かったけれど、だいぶよみがえりつつありますね」「だいぶよくなってきましたけど、まだきれいにできるわね」と述べています。
汚水をためる工夫や、汚れたものが流れにくくするようにするそうですが、はたしてオリンピックまでに、対策は間に合うのでしょうか。
Next: 決して「水に顔をつけてはいけない」海でも、条例変更で世界大会開催へ
一般の人は遊泳禁止、でも…
そもそもお台場海浜公園の海は、東京都は「遊泳禁止」区域に指定しているところで、2014年から膝下までは入っていいことになりましたが、決して水に顔をつけてはいけないとしているところなのです。
この「遊泳禁止」区域でトライアスロンを行うというのです。
では、なぜ遊泳禁止と東京都が定めた区域で、トライアスロン大会が開催されるのでしょう。
それは条例変更がなされ、国際大会に準じるものは「可」とした、つまり一般の人は遊泳禁止だけれども、国際大会に準じる選手は泳いでも良いとしたのです。
この基準はいったい何なのでしょう。
日ごろから体を鍛えている人は問題ないということですかね…。
杜撰(ずさん)な調査ではないか
8月17日のパラトライアスロンでのスイム中止となったデータは、水質検査で基準(100ml以下で250匹以内)の2倍の大腸菌が検出されていました。
この数値は、ITU(国際トライアスロン連合)では最悪の「レベル4」に分類されるそうです。
大腸菌を調べる理由は、大腸菌が多いほど他の菌もいる可能性が高いということになるからだそうで、この大腸菌は「糞便系」の大腸菌だそうです。
糞便系大腸菌群は、44.5℃で発育可能な菌群だそうで、この44.5℃で24時間培養して調査をするものらしいのですが、18日実施した前提となる検査は、16℃だった17日の夕方に採取して翌朝に出たデータをもとに、「問題ない」としてスイム競技を実行されたのです。
水質検査基準の「100ml以下で250匹以内」の大腸菌の数は、1,000人にのませて30人がおなかをこわす確率になるそうです。
専門家の意見ですが、大腸菌はもともと弱い菌なので、大腸菌の数が減ったから大丈夫という判断は危ないと指摘しています。
それは、弱い大腸菌の数が減ったことイコール強い菌もいなくなったとはならないでしょうというのです。
レベルが高い状態から改善される段階では、たしかに基準は大腸菌の数だけれでも、このようなことも考慮しなければならないのではとの専門家の指摘もうなずけます。
よく言われることですが、「国際ルール上問題ない…」「ルールどおりに調べて問題なかった…」という表現がなされますが、これって、すべて結果ありき、つまり実施前提の証拠づくりのように聞こえてしかたがないのですがね…。
Next: 会場変更の必要はないだと?本番は台風・ゲリラ豪雨でさらに汚水が増える…
組織委「会場変更の必要なし」
五輪やパラリンピック期間中は台風の接近や「ゲリラ豪雨」の発生も予想され、汚水放出の頻度は高まるとみられていますが、それでも組織委は「会場変更の必要はない」との立場を貫くようです。
組織委などは、テスト大会で設置したスクリーンを3重にする案を考案、テスト大会では海面から1枚のスクリーンを垂らすだけだったものを、海面から2重に垂らしたスクリーンの間に、海底から海中にのびるスクリーンをもう1枚設置することで、スクリーンの内と外の水の流れを確保しつつ大腸菌など不純物の流入を防ごうという考えのようです。
結果ありき、つまりもう会場変更はできないのでしょう。もちろん大会中止ということもできないでしょうしね。
大塚専務理事は「男子ができなければ、翌日の女子と同時に。2日で行うパラを1日でやる方法もある。予備日があれば、対応できる」と話しているそうです。
フランス新聞社は「トライアスロン選手の最大の敵は大腸菌だ」と書いています。日本の水は、汚染水処理が発達していてアジアで最もきれいであるにもかかわらず、最も汚いところで泳がせるのか…と。
海外の厳しい視線にさらされることにならなければいいのですが…。
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