ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。ジム・ロジャーズ著『日本への警告』(講談社+α新書)の取材に引き続き、年明けにシンガポールでロジャーズ氏にインタビューをしました。
株の大暴落から株の乱高下が続いており、日本では政府の対策に不満を漏らす声も多く聞こえます。しかし、そんな時に金価格は上がるとロジャーズ氏は言います。
(『花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編』花輪陽子)
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外資系投資銀行を経てFPに。2015年からシンガポールに移住。ジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)をインタビュー監修。『シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。「ホンマでっか!?TV」「有吉ゼミ」などテレビ出演や講演経験も多数。
政府への不信感が高まる時に金価格は上がる
「政府に対して人々が不信感を抱く時に金価格は上がる」シンガポール在住、天才投資家のジム・ロジャーズ氏は断言します。
自身も田中金属が大好きで、銀座に行くと買い物に行くようです。取材時にはお気に入りのゴールドとシルバーのカップを見せてくれました。シルバーの食器は代々引き継がせることができるので気に入っているようです。
日本では金のアクセサリーなどが高値で売れるので小遣い稼ぎに売ろうとする主婦も少なくないと伝えたところ、「一般の人が売ろうとしている時に買いたいね」と言っていました。
金価格はまだ上昇すると読んでいるようです。
日本のGDP(国内総生産)は、昨年10月から12月までの前の3ヶ月と比べて、マイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました(編注:9日に発表された改定値では、前期比マイナス1.8%減、年率換算はマイナス7.1%とさらに悪化しています)。
これは新型肺炎勃発前の数字です。ロジャーズ氏は「消費増税はクレイジーだ」とも言っていましたが、やはり消費税増税は経済に大きなダメージを与えました。
多くの国では、2020年の経済成長率予測を大幅に下方修正しています。韓国・イタリア・イランなどでも新型コロナウイルスの感染者が急増しています。
世界情勢が不透明になるなか、金価格が上昇しています。
地金大手、田中貴金属工業は21日、金を1グラム当たり前日より92円高い6,442円で販売しました。同社小売価格としては1980年1月に付けた過去最高値に次ぐ2番目の水準です。
富裕層は金地金や現金で資産を持ちたがる
今、多くの富裕層が現物の金地金や現金で資産を持ち始めています。政治的不確実性と景気後退の懸念が大きな理由として挙げることができます。
世界的に超低金利で、銀行に預けていてもたいして利息がつかないので、民間会社の金庫に金地金や現金などを入れている人もいるようです。東日本大震災では、総額約38億円の金庫などに入った現金が出てきて警察に届けられたという話もあります。
日本では銀行の1日の現金引き出しの上限が決まっています。仮にマスクや消毒液やトイレットペーパーのように皆が一斉に預金の引き出しを求めると、当然支店にそんな現金はないわけです。銀行は預金を預かり、それを貸し出しや運用に回しているからです。
キャッシュレスが進む中、一般人はマイナス金利や金利がゼロでも銀行に預金をしておくしかありません。
しかし、富裕層の多くはキャッシュレスが促進されてもニコニコ現金主義を好みます。セキュリティー面で気にする人や記録が残るのを嫌う人もいます。管理されたくないので、SNSも一切使わないという人もいるほどです。
Next: どんなに政情が変わろうとも金の価値は失われない。ロジャーズ氏の警告は…
どんなに政情が変わろうとも金の価値は失われない
日本では、2024年度上半期に新紙幣に刷新される予定です。
新紙幣に切り替わると、金庫などで保管されている紙幣が数年以内に表に出てくる可能性が高いです。次第に旧紙幣は利便性が下がっていくからです。キャッシュレス化や新紙幣への切り替えによって、現金資産の補足が促されます。
紙幣に比べると、金地金は古くから世界中で資産として流通してきた歴史があります。
インド人は伝統的に資産防衛策として金を購入します。妻や子供達の耳飾りや腕輪などゴールドの人を未だによく見かけます。政情も安定しておらず、凄まじいインフレなどを歴史的に経験してきたからでしょう。
そのため、どんなに政情が変わろうと価値が失われない金を買うのです。富裕層はETF(上場投資信託)ではなく、確かな裏付けを確認できる現物で保有をしたいようです。
一般人がゴールドで利益を得るなら?
ただし、一般の人が金の現物を保有する場合、保管料がかかるうえに、売却をする時に一般に譲渡所得として税金を支払う必要があります。
また、保有期間によって計算方法が異なります。筆者も現物の金を保有した経験がありますが、そうした手間はかかりました。
さらに、配当なども産みません。そのため、一般の人がキャピタルゲインだけ狙う場合、「ETF」に投資をする方法が有効です。
金(現物 1oz.あたり)週足 (SBI証券提供)
金価格の高騰はまだまだ序章であって、これからも進むという見方が非常に優勢です。金融緩和が進む中、通貨に対する不信感への代替手段となっているのでしょう。
Next: ジム・ロジャーズは日本をどう見ている? 各国が日本からの入国を制限へ
各国が日本からの入国を制限へ
さて、多くの国が日本からの入国を制限する動きが海外で加速しています。
中国・上海市(14日間隔離して経過観察)、インド(3月3日以前に日本人に発給した入国ビザを無効とする)などに続き、米国なども入国拒否対象に検討しています。
シンガポールの学校では、政府の指導によって、2月1日から7月31日までの間の生徒の旅行予定の確認を義務付けています。対象地域に行った場合は14日間の検疫を受けなければなりません。シンガポール政府は今の段階で長期戦を考えています。
前回の記事『天才投資家ジム・ロジャーズが東京五輪を猛批判「借金が膨らみ、悪い結果にしかならない」=花輪陽子』でも、オリンピックは税金の無駄遣いと書きましたが、このままではオリンピックの開催すら危ぶまれるかもしれません。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年3月9日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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