餓死するほどの貧困、年々悪化する少子高齢化、猛威を振るう新型肺炎。問題を放置すればマズいことになるとわかっていても、止めることができないヤバい状況に日本はおかれている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
2020年2月に日本で起きた餓死事件
2020年の2月。新型コロナウイルスの蔓延で大騒動になっている中、大阪府八尾市末広町のアパートで貧しい母と息子がひっそりと亡くなっているのが発見された。母親は布団の中で、息子はベッドの上で、それぞれ仰向けになって死亡していた。
餓死だった。
母親は57歳。息子は24歳。母親は両足が不自由で生活保護を受給していたことが分かっている。息子は24歳だったが、仕事をしている形跡がないので「ひきこもり」だった可能性がある。
足の悪い母親が受けていた生活保護で、ふたりが暗いアパートの中で細々と暮らしていた光景が目に浮かぶ。
苦境に落ちても助けを求めることすらもできなくなる
母親が生活保護費を受け取ったのは12月が最後だった。以後、水道もガスも止められて、冷蔵庫の中はほとんど空っぽになっていた。
遺体の状況からするとまず母親が先に死亡し、それから息子も飢餓状態になって身動きできなくなって死亡したと見られる。
今の日本にはこの親子のように、障害を持って細々と生きるしかない親と、ひきこもって生活能力のない子供の組み合わせは社会の底辺で大勢いる。
「餓死するのなら、なぜ助けを求めないのだ?」という声もある。それは生活能力のある健常者の考え方でもある。
社会の底辺では、餓死することになっても「どうしたらいいのか分からない」という人々が大勢いるのが実情だ。
親が死んでもどうしていいのか分からないので、遺体と共にずっと暮らすひきこもりの子供もひとりふたりではないのである。ひきこもりは長くなればなるほど、他者と会話ができなくなり、社会と断絶し、苦境に落ちても助けを求めることすらもできなくなっていくのだ。
Next: 40代以上の引きこもりを中心に餓死は増えていく/極限状態へ落ちる貧困層
40代以上の引きこもりを中心に餓死は増えていく
内閣府やその他の調査から、日本にはひきこもりが100万人近くいることが分かっている。
ひきこもりと言えば。私たちは無意識に若年層の姿を思い浮かべるが、実際には40代以上のひきこもりも多い。
彼らの多くは20代からひきこもって、数十年も社会から断絶されている。彼らを支える親はみんな裕福であればまだ救われるのだが、ほとんどの家庭はそれほど裕福ではない中で働かない子供を支えることになる。
しかし、高齢化して親が仕事を失ったり、年金生活に入ったりすると、ひきこもった子供を支えられなくなってしまう。
今後、社会が高齢化し、税金が引き上げられ、社会保障費が削られていく流れが定着すると、貧困に陥って電気・ガス・水道のような大事なインフラをすべて止められて、ひっそりと餓死していく人たちはポツリポツリと現れる。
社会環境が悪化すればするほど極限状態に
2019年にはすでに消費税は引き上げられている。他にも携帯電話税などの様々な税金が検討されている。
衣食住は確実に値段が上がっている。そんな中で医療費の削減もある。年金も薄く薄く削減されている。年金受給年齢の延長も検討されており、少しずつ取り入れられていく。
一方で人件費削減、リストラ、雇い止め、一時休暇なども進んでいるので、収入は増えるどころか減っているのが現状だ。2020年に入って、ギリギリで生きている人はより困窮の度を深めていく流れになっている。
資産を持っている人は、社会環境が悪化しても株式や不動産などの金融資産でヘッジすることができるが、何も持たない人は社会環境が悪化すればするほど極限状態にまで追い込まれていく。
平均年収が186万円であるアンダークラス層は、早稲田大学教授の橋本健二氏によれば2018年の段階で929万人、2025年には1,000万人超となる。
Next: 数年で日本の貧困層は1000万人に? 問題が分かっていても止められない…
問題が分かっていても、止められないのが現実だ
数年のうちに1,000万人を超えるアンダークラスの存在は、今の絶望的な格差と社会不安をより深刻化させていく。
彼らが増えれば増えるほど、社会の底辺はより荒廃する。そして、社会のどん底で困窮していく彼らの存在は、やがては大きな社会不安となって日本社会を覆い尽くすことになる。
しかし、注意しなければならないことがある。2020年以後の日本では、社会の底辺から大きな社会不安が起きるというのは確実に予測できることであるにも関わらず、それは「避けることができない未来」であるということだ。
予測できているから避けられるというわけではない。むしろ、予測できていても為す術もなく巻き込まれていく。
たとえば、全世界で広がったグローバル化を考えて見ても分かる。
グローバル化は先進国の労働者から仕事を奪い、やがては労働者の賃金を低下させたり失業問題を引き起こしたりして貧困を生み出すことになったのだが、それはまったく予測できなかったことなのか。
いや、そうなると最初から予測されていた。しかし、誰も止められなかったから今の惨状がある。
予測できていたのに避けられなかったという例で言えば、たとえば日本の超少子高齢化も、日本社会に大きな悪影響を及ぼすことになると20年以上も前から分かっていた。
少子高齢化のワナに陥ると社会保障費が増大して政府が莫大な借金を抱えることになるというのも分かっていた。
しかし、日本人はこの問題に対して先送りと事なかれで対処して、今も何ら解決策を見出していない。
「結末」は分かっていても「過程」が分からない
日本の総人口は2018年10月1日の段階で1億2,644万人だった。
65歳以上の人口は3,558万人となり、総人口に占める割合は28.1%となった。あと数年で日本は3人に1人が65歳以上の超高齢者国家と化す。すでに2020年の今、日本女性は2人に1人は50歳以上である。
こうした少子高齢化が続くと、どうなるのか。
地方が壊死し、大学が倒産ドミノに巻き込まれ、認知症患者が700万人を突破し、介護離職が大量発生し、税金がますます上がって生活が苦しくなる。
やがては東京都も人口減少に入り、優秀な人材が確保できなくなり、経済大国の地位が維持できなくなる。
それは予測されている。
しかし、見ての通りだ。日本の政治家はこの亡国に至る道を止めることができていないし、国民もまるで他人事のように問題を見ている。問題が分かっていれば止められない。
Next: 新型コロナウイルスも、分かっていても止められない
完全封鎖すると経済が死ぬ
分かっていても止められないと言えば、新型コロナウイルスの問題もそうだ。
新型コロナウイルスはワクチンが開発されれば収束する。それまでは人と人が接触しないように封鎖が重要になる。
しかし、封鎖を続けると経済が悪化するので完全な封鎖ができない。かくして、対応は中途半端になり、新型コロナウイルスのウイルスは蔓延する。
問題が分かっていても止められない。
災害を完全に避けるというのは基本的に不可能である。分かっていても必ず大きな被害が発生するのだ。問題が発生することが分かっていても何もできない。
「マズい結末」にわかっていながら突っ込むだけ
社会の底辺部で広がる貧困の蔓延は社会不安の元凶となるのは誰もが分かっている話だが、そうと分かっていても止められない。
少子高齢化の放置も亡国に至ると分かっていても止められない。新型コロナウイルスが蔓延すると大きな人的被害が起きるのは分かっていても経済のために止められない。
問題を放置すればマズいことになる。しかし、そんな「マズい結末」が分かっていても、私たちはそれを止めることができず、ただ悪化していく状況を見つめながら巻き込まれていくしかない状況にある。
今の日本が、かなりヤバい状況にあるのを感じないだろうか?
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年3月11日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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