新型コロナウイルスは2020年に極度の不況を生み出す。そうなると、今はかろうじて非正規雇用で生きている若者は社会から切り捨てられ、より悪化していく社会の中で一段階「下」に落ちてしまうことになる。つまり、彼らは住居を持たずに社会のどん底を這い回る生活に追い込まれてしまうのである。これを世間一般では「ネットカフェ難民」と呼び、行政は「住居喪失不安定就労者」と呼ぶ。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
※有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』好評配信中!ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
景況の悪化は「まだ」坂道を転がり落ちている途上
新型コロナウイルスは金融経済にも大きな悪影響を与えていて、株式市場もナイアガラの滝のごとく暴落しているのだが、本当に危険なのは「実体経済」への悪影響がこれから本格的に起きるということだ。
中小企業の中には、すでに経営悪化に見舞われている企業も多い。
国も企業も「家で大人しくするように」と国民に半強制しているので、外食産業・観光産業・サービス産業が急激に業況の悪化に見舞われている。
2020年3月21日、日本商工会議所が出した資料でその衝撃的な業況悪化が見える。
製造業:51.7%が悪化したと回答
卸売:53.1%が悪化したと回答
小売:58.9%が悪化したと回答
サービス:55.8%が悪化したと回答
新型コロナウイルスの問題が日本に波及したのは1月の半ばからだが、たった2ヶ月で業況は一気に悪化。前月比の悪化率は過去最大となっていることを見ても分かる通り、今「実体経済」は、前代未聞の危機に見舞われているのである。
上記の業種だけでなく、新型コロナウイルスによる経営の悪化については「9割以上の企業ですでに影響が発生している」ことを日本商工会議所は述べている。
悪いことがある。新型コロナウイルスの治療薬・特効薬はまだ開発されておらず、自粛は少なくとも4月中、あるいはそれ以後も続く可能性が高い。
つまり、景況の悪化は「まだ」坂道を転がり落ちている途上であって、「底」には到達していない。これでも、まだプロローグの段階であり、本当の地獄はこれから始まるのである。
不況になれば若者から転落していく
どこの国でもそうだが、景気が悪くなれば人件費削減に走る。
人を雇うにしても、経験も知恵も技術もない若者は雇わない。不況になれば即戦力になる熟練した人間も仕事にあぶれるのだから、世界中で若者の雇用は後回しになるばかりだ。
日本でも同じだ。新型コロナウイルスによる社会の混乱はまだまだ続くので、若者の雇用先はどんどん減る。就職できない人間も増える。やむにやまれず非正規雇用でしのぐ若者も増える。非正規雇用でも雇われない若者も増える。
そうであれば、すでにアンダークラスに落ちている若年層のさらなる状況悪化、すなわち「住居喪失不安定就労者」への転落も増えていくだろう。これは、俗に言うネットカフェ難民を指す。
Next: 今、多くの若者が「住居喪失」になっていないのは親に依存しているからだ――
住居を持たずに社会のどん底を這い回る生活になる
今、多くの若者が「住居喪失」になっていないのは親に依存しているからだ。少なからずの若者は親の住居で生活している。親の家が、若者の苦境を覆い隠していると言っても過言ではない。
しかし、親に依存できる若者ばかりではない。特に地方から東京に出てきた若者は頼るべき親がいないので、親の家に同居するという選択肢が取れない。「自分の面倒は自分で見る」必要がある。
新型コロナウイルスは2020年に極度の不況を生み出す。「自分の面倒は自分で見る」が厳しくなる。
今はかろうじて非正規雇用で生きている若者は社会から切り捨てられ、より悪化していく社会の中で一段階「下」に落ちてしまうことになる。
つまり、彼らは住居を持たずに社会のどん底を這い回る生活に追い込まれてしまうのである。これを世間一般では「ネットカフェ難民」と呼び、行政は「住居喪失不安定就労者」と呼ぶ。
これらの若者たちが潜在的な「若年ホームレス」予備軍だ。ネットカフェの宿泊代すらも払えなくなったら、もはや行き場もなくなるからである。
彼らが増えるのか減るのかと言われれば、これからもちろん増える。
倒産急増で「住居喪失不安定就労者」も増えていく…
もちろん、誰しも「住居喪失不安定就労者」などになりたくないから、必死で仕事を探す。
しかし、新型コロナウイルスは彼らを雇う中小企業の経営を直撃しており、2020年3月の段階で92.1%が「悪影響を被っている」のである。
製品・サービスの受注は減り、売上が減少し、客数も減少している。イベントも自粛の嵐となり、商談も延期や中止になっている。グローバルにサプライチェーンが寸断されているのであらゆる製品の納期も遅れてしまっている。
資金繰りが急激に悪化して、倒産も増えている。
それが今起きている状況だ。そんな中ではいくら本人が働く気力があっても、状況は変えられない。
中小企業の92.1%はもう人を雇うような状況ではなくなっているのだから、非正規雇用者の若者は凄まじい危機に直面していると言っても過言ではない。
今、かろうじて何らかの仕事に就いている非正規雇用者も安泰ではない。この状態のまま新年度を迎えると、企業は必ず組織を改編し縮小(シュリンク)させる。つまり、必然的に「人減らし」が起きる。
非正規雇用者はリストラされやすくなる。そして新年度からは一度リストラされると次の就職先がなかなか見つからなくなる。
だから、家賃が払えなくなって住居を失う。住居を失えば、ますます就職が難しくなる。就職が難しくなると、ますますカネがなくなる。
Next: この社会情勢は「住居喪失不安定就労者」を増やす。今、ネットカフェの――
社会のセーフティーネットは整備されていない
この社会情勢は「住居喪失不安定就労者」を増やす。今、ネットカフェのオールナイト利用者の約25%が「住居喪失不安定就労者」であると東京都は2018年の実態調査で統計を出しているのだが、2020年はより悪化するはずだ。
参考:「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果|東京都(2018年01月26日配信)
一度「住居喪失不安定就労者」に落ちてしまえば、もうほとんど救いはない。そこから這い上がる社会のセーフティーネットは整備されていないからだ。
落ちてしまった人間は延々と日雇い労働の中で人生を消費し、やがてその殺伐とした生活の中で精神を病んでいく。
2019年9月。新宿のあるネットカフェで40代の住居喪失不安定就労者が、ネットカフェを放火して逮捕された事件があった。彼は仕事も失い、カネも失い、すべてを失って自暴自棄になって、放火した理由をこのように説明した。
「もう、どうでも良くなってやった」
このような自暴自棄から生まれる住居喪失不安定就労者の事件が今後は増えていくのかもしれない。
危険な時代になっている。
<初月無料購読ですぐ読める! 3月配信済みバックナンバー>
※2020年3月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- コロナショックはいずれは落ち着いて、どんな形にしろ日常は必ず戻ってくる(3/22)
- 私のやっている投資がコロナショックでの相場大激変でも何の問題もない理由(3/15)
- ついにやってきた株式市場の暴落と乱高下。この社会情勢で私はどう動くか?(3/8)
- 新型コロナウイルスで市場が変わった(2)12%の暴落をどのように考えるか?(3/1)
※有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』好評配信中!ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込550円)。
- 新型コロナウイルスで市場が変わった(1)日本はもしかしたら見捨てられる?(2/23)
- 「中国を潰してやる」というのは、アメリカの一貫した方策であることを認識せよ(2/16)
- 新型コロナウイルスが浮き彫りにしたのは、中国に投資すべきではないということ(2/9)
- 中国の新型肺炎で、1月17日に「オーメン」を嗅ぎ取って動いていた人たち(2)(2/2)
- 中国の新型肺炎で、1月17日に「オーメン」を嗅ぎ取って動いていた人たち(1)(1/26)
- 国民年金だけでは65歳以後は乗り切れないということを早く自覚して行動すべきだ(1/19)
- 私がやりたいのは「株式市場での火事場泥棒」。社会が混乱している時に盗む(1/12)
- イランの反米司令官が爆殺されて肉片となったので米国株式を増やすことに決めた(1/5)
- 【新年特別号】令和すなわち地獄。終わりの始まりを迎えた日本で経済的にサヴァイヴする方法(1/1)
- 私が「2020年代が自分の人生で最もキツい年代になる」と覚悟している理由とは?(12/29)
- 「捨て石」の概念を見直せ。これが前もって成功に辿り着く確率を上げる方法(12/22)
- 読者のみなさまへ、バックナンバーのご案内(12/17)
- 2019年の総括と、2020年のこと。相場の動きは読まない。何か起きたら対応する(12/15)
- 社会が重要な岐路にあるとき、次の方向性を知るためには何を見ればいいのか?(12/12)
- 日本人は全員で消費税を引き上げた政治家・官僚・財界の馬鹿どもに復讐せよ(12/8)
- 【まぐまぐ】年賀状キャンペーン期間延長のお知らせ(12/1)
- 株式の割高・割安を見る3つの指標と、これから起きそうな予兆についての考察(12/1)
- 社会は大きな「ゆがみ」を生み出すのだが、それを見つけて埋めるとカネが入る(11/24)
- 「楽して手っ取り早くカネを増やしたい。思惑が外れたらサヨウナラ」の気持ち(11/17)
- 鈴木傾城が今の投資について思っていること(2)世界を買うか、米国を買うか?(11/10)
- 鈴木傾城が今の投資について思っていること(1)相場は上がっているが……(11/3)
- 次のリーマンショック級の経済ショックが起きたら、ソフトバンクは死ぬ(10/27)
- 人生も壮大な賭け。投資から人生まで「賭け方」で知っておくべき4つのタイプ(10/20)
- 投資の前に貯金や収入を何とかしなければならないのであれば、どうすべきか?(10/13)
- 「一生現役」は、政府が日本国民を死ぬまで働かせるためのキーワードである(10/6)
- 圧倒的な弱者であっても、絶滅するどころかしたたかに生き残っている事実(9/29)
- 資本主義では資本が生み出す不労所得を手に入れることが最も大きな「旨み」だ(9/22)
- 今までの資本主義は「株式保有」が生き残るための武器だったが次はなにか?(9/15)
- 重い借金を抱えて地獄を見て生きている人は、借金のない人が幸せに見える(9/8)
- 消費税10%を乗り切れ。ダメージを受ける人は、その分をサイドジョブで吸収せよ(9/1)
- 下らないマウントが横行するネットの世界で自分のスタイルを守るには?(8/25)
- 最先端のバイオ・ゲノム企業に投資するのが難しい理由と乗り越える方法(8/18)
- 中国発の株式市場への巨大な悪影響は、いつか必ず私たちに襲いかかってくる(8/11)
- 8月1日に巨大損失を被ったのであれば、それは健全な投資をしていない証拠(8/4)
- アメリカに投資していないのであれば、本当の意味の恩恵を受けていない(7/28)
- カネのあるところから無理やり自分にトリクルダウンさせる仕組みがある?(7/21)
- アメリカの株式市場が史上最高値更新。しかし、有頂天になる局面なのか?(7/14)
- アーリーリタイアは「夢のまた夢」なのか「何とかできる」ものなのか?(7/7)
- 定期定額積立投資しながら暴落待ち。私が次の暴落に投資したいのはこれだ(6/30)
- 率直に言うと、日本の株式市場に長期投資するというのは人生最悪の選択(6/23)
- 米中新冷戦は長引くが、これによってアメリカに賭ける戦略は終わるのか?(6/16)
- 第一線を離れてからも要領良く資産を増や続けるビル・ゲイツを観察せよ(6/9)
- 起業して10年後に生き残れるのは6%。起業に人生を賭けない生き方も悪くない(6/2)
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年3月28日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編
[月額550円(税込) 毎週日曜日]
日本で最も「危険を感じさせる」と言われているブログ「ダークネス」。アジアの闇をテーマにした「ブラックアジア」。この2つのブログで月間約150万ビュー以上を叩き出している鈴木傾城のメルマガです。様々な事件や事象を取り上げて、ブログ「ダークネス」にも書き切れないホンネを書いていきたいと思います。