金相場は上昇し、1カ月ぶりの高値を付けた。私は2027年まで上昇するとみている。現在の水準から3倍から5倍になるポテンシャルを持っていると考えている。また最近は金の代替でビットコインが買われている。どこでビットコイン市場に参入すべきか、非常に難しい。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)
本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年12月21日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリファンドマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
金相場は上昇、1カ月ぶり高値へ
金相場は上昇し、1カ月ぶりの高値を付けた。米追加経済対策の協議進展への期待などを受けて買いが膨んだ。
コロナワクチン接種が米国内で14日から始まった一方で、コロナウイルスによる死者数の増加に歯止めがかからない状況も金には支援材料となった。
一方で、FOMCの内容も金相場を支えるとの見方につながった。FRBが米経済への資金供給を増やし、政策金利を低く維持する方針を表明したことを受けて、ドルが値下がりしたことが金相場を押し上げる結果に。
17日には一時1カ月ぶり高値の1,895.81ドルを付けた。米政府機関の閉鎖を回避するための期限が18日に迫る中、与野党は9,000億ドル規模の新型コロナ経済対策案の合意に向けて協議したとの報道でドルが数年ぶり安値に下落したことも金相場を押し上げた。
金(現物 1oz.あたり)日足(SBI証券提供)
事実上のゼロ金利が続く中、FRBは米景気回復が確実になるまで金融市場への資金供給を維持する方針を表明したことも金相場を支えた。
世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は12月11日の1,175.99トンから、18日には1,167.82トンに減少。小幅ではあるが、投資家が引き続き金を売却していることが確認できる。
COMEX金先物市場における大口投機筋の12月15日時点のポジションは27万1,584枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,364枚拡大した。買いポジションが2,339枚増加し、売りポジションが25枚減少した。新規のロングが増える一方で売りが出ておらず、投機家は強気な姿勢を維持しているといえる。
投機筋ポジション(12月15日時点)
<COMEX金先物>
ネットポジション:+271584枚(前週比+2364枚)
ロングポジション:+340610枚(前週比+2339枚)
ショートポジション:+69026枚(前週比-25枚)
<COMEX銀先物>
ネットポジション:+49512枚(前週比+1136枚)
ロングポジション:+80689枚(前週比+1379枚)
ショートポジション:+31177枚(前週比+243枚)
<NYMEXプラチナ先物>
ネットポジション:+25076枚(前週比+574枚)
ロングポジション:+36924枚(前週比+625枚)
ショートポジション:+11848枚(前週比+51枚)
Next: 再び投資家の関心が集まるか?金は2027年まで上昇へ
金相場の見方
金相場はようやく上げてきた。1カ月ぶりの高値を付けたことで、再び投資家の関心が金に向かうかに注目している。
ただし、株価が依然として堅調なだけに、金市場に投資マネーがすぐに戻ってくるとは考えにくい。それでも、金相場は徐々に値を回復しており、一部の投資家や投機家は買い始めているといえる。
逆に、いまよりも安い水準で金を売ったのは、現在株式を積極的に買っている投資家たちである。先週も解説したように、投資家は11月に金関連ETFを大量に売却した。自らの売りが、金相場の水準を押し下げたわけである。
このような一方通行のマネーフローが確認されたときには、その後の動きにぜひ注目しておきたいところである。今後何が起きるかをみておけば、今後の投資判断の参考になるだろう。他人の投資行動を参考にすることで、学べることもある。
金相場はこれまでなかなか上値追いにはならず、苦しい展開が続いていた。また、ドル指数は数年ぶりの低水準で推移していても、ほとんど材料視されなかった。その一方で、金相場が上がってくると、財政出動やFRBの政策を理由として取り上げている。
しかし、その状況はすでにかなり前から起きている。所詮、市況解説は後講釈である。
米国で初のコロナワクチン供給が加速しているとの報道を受け、感染流行の潮目が変わり始めるとの期待感が浮上し、これが株式市場のセンチメントを押し上げているが、それでも金が上がるのは説明がつかない。
しかし、相場とはそういうものである。投資家が散々売った後に戻り始めたことは、相場ではよくあることである。指摘してきたように、これまでの投資フローを理由に下げていたときには、しっかり買っておけば、あとでよいことがあるはずである。
中銀は当面、株高と金相場を支え続ける
FOMCではハト派的な姿勢が示された。いまはとてもではないが、出口戦略などを語ることはできない。とにかく、株価を支える必要がある。少なくとも、パウエルFRB議長からは、利上げや量的緩和策の縮小などの発言は当面出てこないものと思われる。
無論、このような中銀の姿勢は、株高と金相場を支えるだろう。
一方で、米バイオ医薬品企業モデルナのワクチンが、米食品医薬品局(FDA)が有効性や安全性に問題がないとし、緊急使用の承認が得られたことは、金相場の上値を抑える材料になりやすい。とはいえ、このような材料は、所詮は目先のものでしかない。長期投資家にとっては気にする必要はあまりないだろう。
金は2027年まで上昇する
私自身は、金は2027年まで上昇するとみている。この点もすでに当メルマガで解説したとおりである。
現在の水準から3倍から5倍になるポテンシャルを持っていると考えている。また、インフレへの備えも必要である。したがって、長期目線を失わずに、じっくりと取り組むのがよいだろう。
Next: 金の代替として買われるビットコイン。投資妙味はあるか?
金の代替として買われるビットコイン
ところで、最近は金の代替でビットコインが買われている。
驚いたのが、グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏の発言である。債券投資家のマイナード氏が、ビットコインに40万ドルの価値があるとしたのである。そのうえで、自社のマクロファンドでビットコインの配分を10%に引き上げることを計画しているとしている。これは、法定通貨の価値の低下に対する対策のようである。
マイナード氏はビットコインが1万ドルのときに買いを検討し始めたようだが、その判断の背景には金と同じような希少性や相対的なバリュエーションを感じているようである。また、ビットコインは金の特徴の多くを持っており、同時に取引に用いる上で稀有な価値を有しているともしている。40万ドルといえば、いまの水準の20倍である。
実際のビットコインのバリュエーションは誰にもわからない。しかし、みんなが買うから買うという動きになっているようにも見える。また、前回の上昇相場とは中身が違うとの指摘もある。ヘッジファンドや機関投資家が参加し始めていることがその理由である。
しかし、それは上げているからそう言えるのであり、あくまで後講釈である。
どこでビットコイン市場に参入すべきか、非常に難しい。もうしばらく静観してみたいと考える。ただし、いずれ参入せざるを得ないと考えている。
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『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2020年12月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。