日本人は2倍キケン。世界38カ国を旅した写真家が教える、海外旅行のリスク管理

(C) Masashi Mitsui(C) Masashi Mitsui
 

いつも安全安心なパック旅行だけじゃ旅の醍醐味は味わえません。とはいえ、危ないかも…という国に出かけるのは勇気がいります。旅の写真家の三井昌志さんによれば、ちょっとしたリスク管理をするだけで、外国人が来ない場所でも意外に安心なのだとか。

旅のリスク管理術

素顔のアジア (たびそら・写真編)より

【質問】

こんにちは。「たびそら」いつも読ませて頂いてます。

今日はインド旅行に関して、3つほど質問させてください。

1.カメラのバッテリーはどうしているのですか?一日中撮影する場合、一つじゃ足りないと思いますが、いくつ持ち歩いているんでしょうか。

2.宿にwi-fiはどの程度普及していますか?安宿でもwi-fiがあることが多いのでしょうか。あるいは、SIMを購入しているのでしょうか。

3.宿に荷物は置きっぱなしですか?着替えなんかは盗られても大したことないですが、PCやHDDを置いておくのは怖いです。どのように管理されてるのでしょうか。

【三井の答え】

1.いま僕が使っているのは、Canon EOS-5D Mark3というカメラですが、こいつは電池の持ちが非常に優秀で、フル充電なら2000枚を優に超えて、条件によっては3000枚近くシャッターが切れます(気温が高いほど、電池の持ちは良くなります)。一応、予備バッテリーを1個持っていますが、使うことはまずありません。

ただし、これはカメラによって全然違います。コンデジは充電池が小さいので2~300枚ぐらいしか撮れないですし、液晶画面が常に光っているミラーレスも電池の持ちは悪いです。

ですから、あなたが旅先にお持ちになるカメラがフル充電で撮影できる枚数と、あなたが一日で切るシャッターの数とを比較検討して、予備電池を何個用意したらいいのか決めてください。せっかくのシャッターチャンスを「充電切れ」で逃す、という事態は避けたいところ。でもメーカー純正の予備電池ってけっこう高いんですよね。

india15-50468

シャッターチャンスは何の前触れもなしに訪れるもの。準備は万全にしておきたいですね。 (C) Masashi Mitsui

 

2.外国人がよく利用する観光地の安宿なら、Wi-Fiが使えるところも多いです。有名な観光地だけを回るつもりであれば、Wi-Fiだけを頼りにしても大丈夫でしょう。

ただし僕が泊まっているような、外国人があまり来ない宿では基本的にWi-Fiはありません。というわけで、僕はインドでSIMカードを購入して、日本から持ってきたSIMフリー版iPhoneでインターネットに接続しています。

IMG_0977

カルナータカ州で泊まった安宿の汚い部屋。小さな田舎町の宿には当然Wi-fiなんてありません。 (C) Masashi Mitsui

3.パソコンや写真データが入ったHDDが盗られたら、ダメージはめちゃくちゃ大きいですよね。ちょっとやそっとでは立ち直れないかも。だからといって、宿に荷物を置かないで、貴重品すべてを背負って町を歩くというのも面倒です。というか、そんなことをしていたら疲れて長くは歩けません。

僕は基本的に、インドの宿を信用することにしています。もちろん100%絶対安全とは誰にも言い切れないけど、少なくとも僕の経験上、部屋を開けた隙に誰かが侵入してものを盗んでいったということはありません。

しかしこれは、あくまでもあなた自身が判断することです。心配でどうしても宿に荷物を置けないというのであれば、すべて背負って歩けばいいのです。それがイヤなら置いておけばいい。すべての行動の責任は旅人自身にあります。

・・・とまぁ突き放した事ばかり書くのも何なので、僕が行っている「盗難リスク軽減策」を紹介しましょう。

ひとつ目は「自前の南京錠を持つ」こと。インドの安宿によくある「ドアのかんぬきに南京錠をかける」タイプの部屋なら、この手が使えます。宿で用意された南京錠ではなく、自分の南京錠に勝手に付け替えてしまえばいいのです(宿側に文句を言われることはありません)。これで「外出中に宿の人間がコピー鍵を使って部屋に入る」というリスクは防げます。南京錠は日本で買ったものがいいでしょうね。インドの南京錠は外見はごついのですが、あまり信用できません。

india15-22265

インドの街角には南京錠を並べた屋台がある。 (C) Masashi Mitsui

二つ目は「宿の鍵をフロントに預けない」ということ。これもひとつ目と同様に、宿の人間の内部犯行を未然に防ぐ目的で行っています。もちろんその気になれば、宿のマスターキーを使って鍵を開けることは可能ですが、たとえば「自分の部屋の鍵を間違って別の人に渡す」なんてことや「フロントに誰もいない隙に、誰かが自分の鍵を取っていく」なんてことは起こらなくなります。

三つ目は「万一盗まれた時のダメージを最小にする」ということ。具体的には、写真データが入ったハードディスクを2台持ち、「宿の置くバックパック」と「いつも背中に背負うカメラバッグ」とに分けて入れるのです。こうすれば、仮にどちらかを失っても、これまで撮影したすべてのデータを失う事態は避けられます。

以上3点、自衛策を紹介しましたが、そうはいってもリスクをゼロにすることは絶対にできません。自分ができることを最大限やった上で、あとは運を天に任せるしかない。

旅というのはそういうものです。トラブルは多かれ少なかれ必ず起こります。大切なのは、トラブルが起きてもパニックにならないよう心の準備をしておくことです。難しいですけどね。

india15-36288

(C) Masashi Mitsui

THE BOOMの「島唄」に出てくる「ウージの森」ってサトウキビ畑のことだったんですね。さっき初めて知りました。そうそう、僕もインドの「ウージの森」で、あなたに出会いましたよ。

india15-58859

(C) Masashi Mitsui

春は動物たちの出産ラッシュ。生まれたばかりの羊が草原に座っているのがかわいかった。


book7s写真を撮るって、誰かに小さく恋することだと思う。世界各地で撮影された100人を超人々の笑顔が詰まった写真集です。どんな環境にあっても人は笑顔になれる――そんなシンプルな事実に心動かされながら、僕は旅を続けてきました。ぎゅっと濃縮された「笑顔のエッセンス」を、ぜひ感じてください。

著者/三井昌志
写真家。1974年、京都市生まれ。東京都在住。機械メーカーでエンジニアとして2年間働いた後退社し、2001年にユーラシア大陸一周の旅に出る。帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、写真集「アジアの瞳」を出版。以後、写真家としてアジアを中心に旅と撮影を続けながら、執筆や講演などを行う。これまでに出版した著作は6冊。

素顔のアジア (たびそら・写真編)
旅写真家・三井昌志が送るビジュアル・メルマガ。等身大のアジアの表情を、美しい写真と旅情溢れる文章で綴る無料メルマガ
登録はこちらから

いま読まれてます

  • 日本人は2倍キケン。世界38カ国を旅した写真家が教える、海外旅行のリスク管理
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け