安全性を測る指標「自己資本比率」はどうか?
それでは、最後に企業の安全性を測る自己資本比率はどうでしょうか?
ワタミは、最終利益段階で、2014年3月期には49億円、そして2015年3月期には129億円の赤字を計上し、これまで積み立ててきた利益剰余金が大幅に減少しています。
2015年6月30日時点では、48億円とかろうじて繰越損失は免れている状況ですが、自己資本比率は遂に6.2%まで低下。この自己資本の水準は、鳥貴族の41.6%、大庄の52.6%に比べると極端に低く、いかにワタミの資金調達が他人資本に頼っているかが浮き彫りとなります。
つまり、ワタミは自己資本比率の面からも、窮地に陥っていることが如実に伝わってくるのです。
ワタミの打つ手はあるのか?
果たして、財務的に窮地に落ちっているワタミに打つ手はあるのでしょうか?
利益の面から見れば、営業利益段階で10億円の赤字を計上している事実を踏まえれば、売上に対して人件費や賃料などの固定費が大きな負担になっていることが伺えます。
そこで、ワタミとして打つ手は、メニューの充実などで魅力を高め損益分岐点を超える売上まで高めていくか、それが難しいようであればさらに不採算店を整理して赤字の垂れ流しを阻止することです。
また、セグメント別の利益を見ていくと、主要な事業である国内外食事業、介護事業、海外外食事業、農業は軒並み赤字に陥っています。
一方、宅食事業とメガソーラー施設を運営する環境事業だけは黒字を計上。
そこで、利益水準の高い宅食事業や環境事業に経営資源を傾斜配分して利益拡大を図るなど、短期で利益の向上を目指し、危機的状況を脱していく必要があるでしょう
さらに、経営不安が払拭できた段階で増資を行って自己資本を充実させ、借入を返済して財務の安定化を図るというシナリオが望まれるのではないでしょうか。
介護事業の売却で一息つけるワタミですが、来年度は大きな柱を失った影響でさらに厳しい茨の道が待っています。売却資金として手にする200億円で安心することなく、聖域なき改革を推し進めることが今の経営陣に求められることだといえるでしょう。
※ 実際に財務諸表を見ながら読むと理解も深まります。
今回の講座に登場した3社の財務諸表は以下のサイトからダウンロードいただけますので、是非ともご活用下さい!
ワタミ:平成28年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
image by: Wikimedia Commons
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