甲9号 「思い当たることもあります……今年1月から3月頃、息子のベッドの枕の下に、女性の黒いパンツが……盗んだんじゃないの? そんなことしないよ、恥ずかしいだろ……ブルセラか何かで買ってんだと思った……今回、息子が帰ってこないので部屋を見ると、たくさんの下着がありました……」
うわぁ……。
検察官はこんなことを尋ねた。
検察官「ブラトップ、手に入れて、成功してたらどうしていたの」
どうしてたって、そりゃあ……。被告人は、言い淀むことなく答えた。
被告人「家に持って帰って、それを使って自慰行為をしていたと思います」
何か吹っ切れたかのような、清々しいようなものを俺は感じた。
検察官「お母さん、あなたの部屋から黒い下着……見つかってどう思ったの」
被告人「ヤバイと思いました」
検察官「どうヤバイ、盗んだものだから?」
被告人「盗んだものです」
検察官「同じ被害者から」
被告人「そうです」
本件のベランダから、たびたび下着を盗んでたんだそうだ。
裁判官は、しきりにこんなことを尋ねた。
裁判官「(一度失敗して)もう完全にあきらめたけど、新たにまたやろうと思ったの?」
被告人「一度はヤメようと思いました。でもやっぱりあきらめきれず……」
検察官は控訴事実を2つに分けたけれども、目的物は同じだし時間が近接してる。一罪(いちざい)と認める余地があるのかどうか、裁判官は判決を書くために確認したわけだ。
検察官は論告で「2件の事案であります」とはっきり言い、懲役1年6月を求刑した。
弁護人の最終弁論は、さっき弁護人からの被告人質問で出たことをぜ~んぶ丹念になぞる構成だった。
判決はちょうど1週間後と決め、15時25分閉廷。
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『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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