翌朝は7時には目覚めた。朝食は7時45分頃、と聞いていたが、8時前に部屋の電話が鳴って、1階へどうぞと呼ばれた。
1人旅で困るのが、この広間での食事である。他のテーブルはみな2人以上で、1人で飯を食べるのは案外わびしい。なんとなく、ほかのグループが「あやつは何ものか?」と話題にしているような気もする(自意識過剰だろうけども)。もう慣れたけど、ね。
今はすでにいい歳になったのでそれほどでもないが、まだ20代のころ、1人で温泉宿に取材に行くと、本当に「ナニしに来たんでしょうねえ?」という目で見られたものである。僕は男だからまだいいけど、女性の記者は「恋に破れた女が1人」ではないか、と思われることも多かったと聞いた。
まあ、朝が部屋食となると、朝飯前に布団を上げないといけないので痛し痒し、というところである。
閑話休題。 朝食のメニューをご紹介しよう。 まず写真は以下の通り。

カニのみそ汁がものすごい存在感である
まず、でかい椀に入ったカニ汁が目を惹くのだが、他のテーブルを見ると、皆さんは伊勢エビのみそ汁のようである。2人組でもそうだったので、おそらくは2人1室だと夕食時の刺し身に伊勢エビが付くのかもしれない。雲見の民宿では、それがデフォルトだということも十分にあり得るのだ。
ほかに地物のひじき煮物、沖ボラの湯引きの酢みそ掛け、青菜のおひたし、アジの干物、温泉卵、焼き海苔、香の物、白飯、水菓子の柿である。朝起きてひと風呂浴びていたので、胃も活性化していて、朝から3杯飯。しかし、なんで旅先の朝飯というのはこんなにうまいのかねえ。
それにしても、驚くべきは沖ボラのうまさである。ボラと言うと、首都圏の人間などはあのドブに泳いでいる魚でしょう? などと馬鹿にするのだが、沖の水のきれいな海でとれたものは、刺し身にしても抜群に旨い。養殖真鯛なんぞはまったく目ではないのだ。
このボラは、50センチ以上ある大きなサイズで、本当にうまい。大きなボラだからといって、僕が「大ボラ」を吹いているわけではない。しかも、あまり一般流通しない。民宿などでしかなかなか味わえないものだ。
しかも帰りには「お土産です」と地物ひじきを、またもやタダでもらった。
温泉は源泉かけ流しで、しかも貸切露天風呂付き。夕食も朝食もおいしくてサービスもいい。建物も館内も清潔で居心地もよい。惜しむらくは、布団敷きがセルフなのと、バスタオルが付かないこと。この2つをクリアすれば立派な「ファーストクラス民宿」である。とはいえ、超A級民宿であることは間違いない。
最後に宿泊料である。今回は平日、月曜日に1人1室で泊まり、前述の酒を飲んだ。瓶ビールは1本650円であった。日高見は4合で3000円。宿泊料は1泊9,720円。これに入湯税150円を入れて、全部で1万4,170円。酒を飲まない人だったら1万円以下だ。非常に安い。
ここ、間違いなくおすすめです。
image by: 温泉民宿 高見家
『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋
著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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