性的魅力のないカンフーマスターから現代中国人まで
1970年代に入ると、ブルース・リーや香港のカンフー映画の到来によって、これまでの中国系映画や中国人に対するイメージはガラッと変わります。
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その一方で、ブルース・リーが有名になればなるほど、新たなステレオタイプが植え付けられ、その後に中国人がスクリーンに現れるときには「カンフーマスター」として登場しなければならなくなったのです。
ジャッキー・チェン、ジェット・リー、チョウ・ユンファの存在はこのイメージを強化しました。
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ちなみにジャッキー・チェンのイメージで唯一問題なのは、“白人女性にとっては性的な魅力がない”という点。
一見、成功をおさめたかのようにみえるのですが、あくまで「カンフーマスター」としてのキャラクターが先行しているだけで、スクリーンには闘う姿以外の中国人俳優が描かれることはなかったのです。
しかし、最近になってハリウッド映画界は映画ビジネスがグロバール化の時代になっているということに気づきはじめました。
実際に中国の映画市場は約7600億円を超え、世界最大の映画市場であるアメリカの約1兆2760億円と肩を並べるほどまでに成長しています。中国の海外映画の興行収入は米国内の2倍であり、「アバター」、「トランスフォーマーズ」、「ワイルドスピード」などが大ヒット。
映画の商業的な成功に大いに貢献しているのは確かな事実です。13億人超の人口を抱える中国は、かの日本やイギリスにかわり、ハリウッド最大の海外マーケット市場に躍りでました。
それゆえ、アメリカのプロデューサーたちはスクリーンに描く中国と中国人についてどうすれば良いのかとビビり始めているのです。
このように振り返ると、悪者から英雄へ、そしてカンフーマスターへと90年かけて発展(?)を遂げたスクリーンの中の中国人たち。
近年の映画で描かれる中国人の新しいステレオタイプは、一言でいえば豪商、もしくは救世主的な役どころです。
「ウォール・ストリート」では成功した不動産屋を営む中国人ビジネスウーマン、「2012」ではノアの方舟作りを手助けした中国。
そして、最新映画「オデッセイ」では、中国国家航天局が火星に取り残されたマットデーモン演じる宇宙飛行士を救いました。
分かりやすくて、とても露骨ですね。