15時43分、弁護人立証。書証はなく、情状証人は被告人の母親。容貌も体型も被告人によく似た母親は、こんなことを言い出すのだった。
証人 「ときどき(被告人から)暴力、ふるわれていました。あと、お皿で頭を殴られてケガを…孫(被告人の長女)もいるので、ちゃんとしてほしい…」
弁護人 「お孫さんはどう言ってますか?」
証人 「親は親なので(孫は被告人に)会いたいと…ちゃんと母親らしいことをやってほしいです」
被告人の暴力の原因について尋ねられ…。
証人 「些細な言葉で、突然暴力なので、心当たりはないです」
被告人は感情の制御が困難な場合があるのか。事件がストーカー系であるところに、被告人のキャラが加わって、地裁へ公判請求となったのかも。
裁判官はこんなことを尋ねた。
裁判官 「お孫さんには事件のことを話してあるんですか」
証人 「悪いことをしたので警察の人に捕まったと…。(孫は)泣いてました」
裁判官 「そのことは娘さん(被告人)には伝えましたか?」
証人 「い~え、話してないです」
15時46分、被告人質問。
弁護人 「なぜ脅迫を?」
被告人 「お金、受け取ってくれなかったので、返そうと…」
弁護人 「やり過ぎでは?」
被告人 「そう思います…迷惑かけたなと思います」
今後は介護ヘルパーの仕事をするのだと言わせ…。
弁護人 「娘さんに対しては今回の件を…」
被告人 「…………(泣き出し)年頃なんで…(聞き取れず)…と思ってます」
弁護人 「最後に何かお話ししたいこととかあれば」
被告人 「被害者の方にはほーんとにご迷惑をかけたなと(泣)…今後は絶対にこのようなことがないよう…(泣)」
弁護人 「終わります」
弁護人(長身の年配)は2分で終えた。早っ! こんなものどう転んだって、罰金か執行猶予付き懲役刑と踏んでるんだろうね。
検察官はこんなことを尋ねた。
検察官 「××さんの家からも(脅迫の)メールを…おうちへ泊まりに行く関係だったんですか?」
被告人 「はい…」
起訴状にあった「被告人方ほか1カ所から」の「ほか1カ所」とはその××さん宅であり、「出会い系サイトで知り合った男性」(甲6号証)なんだという。
検察官 「そのような人ができたなら、もう(被害者へ)メール送る必要がないのでは?」
被告人 「はい…」
検察官 「なぜ?」
被告人 「(被害者と)別れたっていうか、また付き合いができればと思ったので、メール送りました」
うーん、そんなもんなのか。俺はそっち方面はどうも不得手で…。
求刑は懲役8月。弁護人が最終弁論でこんなことを言った。
弁護人 「被害者に実害は生じておらず…(いろいろ述べた後)…身体拘束(=実刑)は被告人の娘の精神に重大な障害を与える…」
29回にわたり「殺す」とかメール送信されても「実害」がないのに、おいおい、そりゃねーんじゃねぇの?被告人の犯行に対する弁護人のこういう「持ち上げ」が、再犯の原因になり得るんでは? と思う俺。
15時07分、被告人の最終陳述。被告人は用意してきた文書を読んだ。
被告人 「危害を加えようとは本当は思っていませんでした…殺すなどという言葉を使用しなくとも…」
ありゃりゃ、弁護人に書いてもらったのを丸写し…な雰囲気がばりばり感じられる文体だった。
判決は5月13日(水)13時20分、423号法廷(20席)と決め、15時11分閉廷。
男と女の色恋沙汰の方面は、俺はなぜ不得手なのか。
今ふり返れば、10代の頃、漫画界の金字塔の1つというべき『空手バカ一代(講談社漫画文庫)』を読みふけり、なんだっけ、
「男が色恋を追うな。己を磨いて突き進めば、その背中に女は惚れるのだ」
といった趣旨の「哲学」に感動したから、かもしれない。結果、女たちは俺の背中に惚れたか? ま、そこは言わずにおこうょ、えーん。
『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』 第1488号より一部抜粋
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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