裁判官 「以前から、弱い者に対し、はけぐちにするようなことは…?」
証人 「ぜぇったいっ、ありません!」
10時42分、被告人質問が始まった。
弁護人 「保育園の定員は?」
被告人 「24名です」
弁護人 「子どもは何名いましたか?」
被告人 「当時はだいたい30名くらい…」
おいおぃ、ダメじゃんそれ。
弁護人 「職員は何名でしたか?」
被告人 「日によって…ドライバーを含め、3人だったり、4人だったり…」
その人数に被告人が含まれるのかどうか不明。そういうこと、刑事公判では多いんだよねぇ。
弁護人 「常勤は?」
被告人 「私1人でした」
弁護人 「園長先生は?」
被告人 「いませんでした」
2013年5月、「園長先生と奥さんとの間に子どもが産まれ」、園長先生は「パチンコに行ったり実家へ行ったり」、園長がすべき事務も被告人がやってたんだという。
この頃、被告人は手がしびれたりヤバイ状態になり病院へ。そしたら前出のとおり2013年6月3日、○○病と診断されたわけだ。
しかし被告人は、パートさんの指導をし、そのシフト表をつくり、園便りを作成し、園児の傷害保険の書類等々を作成し、園児の送迎も、なんと自分の車でやってたんだという。
被告人 「お迎えが、6時45分に1人いる…私が迎えに行かないとならない…チャイルドシート2個…3歳児からの椅子…だいたい3名を乗せて…」
「ドライバー」は通常の送迎をし、その勤務時間から外れる送迎を、被告人が自分の車でやってたのだ。なんてこった。
被告人 「情緒不安定になり、死にたいと何度も…リストカットをしていました…週に1回くらい…」
そんな中、本起訴分の被害者A君(6歳)は、他の園児のお昼寝の邪魔をし、何度注意しても全く聞かず…。
これはおかしいと、保育士として感じ、病院へ行かせたところ、A君はADHDとの診断を受け、薬を服用するようになって落ち着いた…のだが、本起訴分の犯行時は薬を服用してなかったんだという。
そんな話が延々と出てきた。被告人は随所で泣き…。
おいおい、これは園児虐待というより、保育士が虐待されて壊れた、そういう話じゃん! ともう否応なく伝わった。
だぁがっ! 検察官からすれば、法廷がそんなムードになるのは許されない。
新人らしき主任検察官は、被告人を悪く見せよう悪く見せようと、しょーもない些末なことを突っ込んだ、偉そうに!
俺は傍聴ノートに書いたょ、こいつクズだな、えっらそうにクズ野郎、もうヤメろよっ、と。
救いは、中堅と思われる相検察官(もしや美人系?)が、ずっと顔を伏せ黙ってたことだ。ほんとに被告人が悪いなら、この相検察官がビシッとツッコミを決めてたはず。 ←俺みたい熟練のマニアになるとそこまで見てるわけですょ、ふふ。
求刑は懲役1年6月。被害者が2人とはいえ、重い。
4月25日(月)13時30分に判決と決め、11時58分閉廷。
執行猶予は鉄板として、俺が裁判官だった主刑を下げるね。いや罰金刑でもいいでしょ。
編集後記
保育園が異常に少なく、「保育園落ちた、日本死ね」が話題になってる。
現場はこういう状況であり、そうして有能で頑張り屋の保育士はつぶれて消えていくのだなと、暗澹たる気持ちになったス。
本件の「園長先生」は他にも保育園をつくり、被告人が手伝いに行くこともあったとか。
保育園事業は儲かるんだなぁ、そしたらこれは“ブラック保育園”か、と思った。
image by:shutter stock
『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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