これに対し鴻海側は当初、最大7,000億円規模の拠出をし、シャープ経営陣も続投させ、液晶事業やその他部門も当面現状維持とし、シャープブランドを残す。銀行の負担については鴻海は基本的に求めないが、機構側は3,000億円規模の債権放棄を要求していた。一見、機構側の提案はきびしいようにみえたが、資金面ではさほど遜色はなかった。シャープ経営陣は両者の提案に何度も揺れ、結局鴻海を選んだ。
しかし最終決断した後に鴻海側は「不都合な情報(偶発債務)を隠していたのではないか」と、精査が終わるまで買収を先送りしたいと揺さぶりをかけ、「在庫、資産、保険、契約書、人員、売掛金などあらゆるものを調べた」という。結局鴻海の出資額は、3,888億円と1,000億円近く減額される結果となってしまった。
さらに、シャープ社長らも退陣することになり、技術などは鴻海側で取り込むことになったようだ。
海外資本の下で再建することは悪いことではない。ただ、もっていた本来の技術やモノづくり精神、将来展望があるのか──すべての軸がなくなり名前だけ残っても本当の再生とはいえないだろう。
(財界 2016年5月10日 春季特大号 第422回)
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