ビジネスは室町時代から学べ。能楽師・世阿弥が説く「最強の交渉術」

 

世阿弥は、それがそれほど大事な場面でなければあえて勝とうとせず、余裕を持って演技を行い、ここぞという場面だけに力を入れることを勧めています。

この部分を読んだ時、私は「交渉と同じだ!」と感じました。交渉の場では、利害が対立する相手との関係で、こちらに有利な状況になることもあれば、防戦一方になることもあり、バイオリズムのようにアップダウンを繰り返しています。

もちろん、戦略を立てて、常に「男時」でいられるよう努めるのですが、必ずしもうまくはいきません。自分の力ではどうにもならない、世阿弥の言う「力なき因果」が働いているように感じられることがあります。

感情も常に揺れ動いています。依頼者が「絶対に譲れない」と言っていた条件であっても絶対ではなく、時間の経過や自分が置かれた環境の変化によって、「これは譲ってもたいして重要ではないな」と、変化してゆくこともあります。相手もまたしかりです。

この時流を読むことは、交渉を有利に進めるために大切なことです。不利な時にでも、ずっと不利ということはないため、慌てたり感情を激したりすべきではありません。相手の話をよく聞き、耐え、じっと流れの変化に注意していると、そのうち環境が有利に変わっていきます。その「今だという瞬間に自分の交渉カードを切ってゆくのです。

いま読まれてます

  • ビジネスは室町時代から学べ。能楽師・世阿弥が説く「最強の交渉術」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け