昨年9月、安倍晋三首相が高市早苗総務大臣に携帯電話の料金引き下げを検討するよう指示を出しました。家計支出に占める携帯電話の通信料金の割合が拡大していることを問題視しました。
これを受けて総務省は、4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を発表しました。同ガイドラインでは、通信料金の高止まりやMVNO(自社で通信回線網をもたず、他の通信事業者の回線を借り受けてサービスを行う通信事業者)の新規参入・成長の阻害の原因となっている「端末実質0円」販売を事実上認めない方針を打ち出しました。
しかし、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は同ガイドラインの死角を狙う形で端末購入補助を行いました。同ガイドラインでは「販売奨励金」を問題視していたため、その代わりの手段としてクーポンを送るなどして端末購入補助を行なったのです。端末の価格が高くなると売れなくなると考えたためです。このことで10月に「ガイドラインに沿わない不適切な端末購入補助が行われている」として、総務省から厳重注意を受けています。総務省による厳重注意を受け、端末実質0円のような大幅値引きとなる端末購入補助による販売はほとんど姿を消しました。
一方で、新規・MNPの通信料金割引が端末補助とみなされましたが、家族割引や長期割引は制限を受けないため、顧客が固定化することで競争が後退する弊害があると指摘されています。この場合、下位キャリアほど不利になります。例えば、家族割引は家族内で同一キャリアを利用している率が高い方がメリットを享受できるため、家族内での加入率が高くなる上位キャリアの方が有利となります。このように、同ガイドラインの抜け道を探る形で大手キャリアは市場を死守しようとしています。
結局のところ、総務省による是正介入でも通信料金の高止まりは解消されていません。例えば、NTTドコモの2016年4~9月における1利用者当たりの月間平均収入(ARPU)は前年同期と比べて150円上昇(ドコモ光除く)しています。ソフトバンクの6~9月のARPUは150円減少(サービス除く)となりましたが、KDDIの6~9月のARPUは140円上昇しています。ソフトバンクは比較的料金の安いスマホの構成比が上昇したことが影響しましたが、NTTドコモとKDDIは大きく上昇しています。利用者は依然、高い料金を支払っている状況です。