さて、インド全土に大混乱をもたらした今回の旧紙幣廃止騒動。これがモディ首相の狙い通りブラックマーケットにダメージを与えたのかどうかはわかりませんが、その副作用によってインド経済が大きなダメージを受けているのは確かです。なにしろ口座から現金を引き出せるのが1日2,000ルピー(今は4,500ルピー)までに制限されたわけだから、高い買い物(たとえばバイクや車)をしようと思っても、手元に現金がないので諦めざるを得ない。実際、バイク販売店のオーナーは「景気は悪いよ」と言っていました。
インド政府関係者は「これを機に、現金決済からクレジット・電子決済社会へ移行するのだ!」とぶち上げているらしいですが、「そんなのムリでしょう」というのがインド庶民の正直な感想でしょう。インド人がクレジットカードを使っている場面なんて全然見たことがないし、カードそのものがまったく普及していない。スマホは急速に普及しているけど、貧困層まで行き渡っているわけではない。
確かにこの数年でインド経済は確実に成長を遂げてきたし、インド人の金回りは良くなりました。5、6年前だと何かモノを買って500ルピー札を出すのはドキドキものだった。「釣り銭がねぇよ」と受け取りを拒否されるのが当たり前だったから。でも今は違います。路上に果物を並べて売る行商人だって、ちゃんと500ルピーを受け取ってくれる(まぁ「みんな」ではないけど)。
とはいえ、「ようやく現金ってものの価値を信じ始めていた」インド庶民に対して、「これからは電子決済の時代です。あなたの銀行口座の数字のみが信用できるのです」と言ったところで、「はぁ? なに言ってんだ?」という反応しか返ってこないはずです。明らかに時期尚早です。
最後に、これからインドを訪れる日本人旅行者へのアドバイス。大都市であれば、基本的にATMでのキャッシングはできるし(多少列に並ぶことはあるにせよ)、引き出せる上限額も気にしないでいい(その分手数料はかかりますが)。空港での現金の両替はレートも悪く、手数料もぼったくられるので避けた方がいいです。また、デリー国際空港の両替ショップでは、使えなくなった旧500ルピー札を渡すという詐欺行為があったとのこと。要注意です。